昨今、日本女性の平均初婚年齢は30歳、第一子出産時の母の平均年齢は30.9歳(2022年時点)となっており、それに伴い「子どもを持ちたい」と思いつつ、なかなか妊娠しないカップルは増加してきています。そのため不妊治療を選択する夫婦は増えており、助産師として不妊治療の知識は重要となってきています。その中で特に生殖看護(不妊症看護)に特化した、生殖看護認定看護師の存在は、不妊に悩む夫婦やカップルの大きな支えとなっています。また、思春期から更年期まで生殖に関する悩みを抱えている女性は多く、そのような女性の支援も行う専門職として認定看護師はいます。では生殖看護認定看護師にはどのようになるのでしょうか?資格の取得方法から役割までわかりやすく解説します。
不妊治療を受ける夫婦やカップル、その他生殖に関する悩みを抱える患者さんに対し、 高度な知識と技術をもって看護を提供する専門家です。
2019年に名称が、不妊症看護認定看護師から生殖看護認定看護師へと変更されました。(以下、この記事では「生殖看護認定看護師」という)
生殖看護認定看護師の資格を取得するために必要なステップとして、まず日本国の看護師免許を有すること、看護師免許取得後、実務経験が通算5年以上あり、そのうち3年以上は生殖看護に関連する看護分野の実務経験が必要です。その後教育機関に入学、研修 カリキュラムを修了し、認定審査を受け、認定証が交付されたら登録をして資格取得となります。資格取得後は5年ごとに書類審査を行い資格更新となります。
現在、認定看護師教育機関にはA課程とB課程があり、A課程とは特定行為研修を組み込んでいない認定看護師教育機関をいい、2026年をもって教育が修了される予定となっています。B課程は2020年度から開始した、特定行為研修を組み込んでいる認定看護師教育機関のことをいいます。しかし生殖看護認定看護師の教育機関は、2025年4月時点でB課程認定看護師教育機関の「英ウィメンズクリニック・大阪信愛学院大学 生殖看護認定看護師教育研修センター」のみとなっています。
〇ワンポイント
2019年度の認定看護師制度の改正に伴い、B課程認定看護師が誕生しました。そのため A課程認定看護師資格を取得している場合、特定行為研修を修了し、日本看護協会への移行手続きを行うことでB課程認定看護師(特定認定看護師)になることができます。
当教育機関での研修期間は1年となっています。またカリキュラムは、生殖看護の基礎からリプロダクティブ・ヘルス、不妊症不育症の診断と治療、生殖看護のカウンセリングなどが含まれています。2025年度のカリキュラムからは、性教育の現状と課題や、男性内分泌、受胎調節における看護など健康レベルに応じた妊娠出産の意思決定の支援ができるような内容も追加されています。(詳しくは当教育機関のホームページをご参照ください。https://www.cn-repro.jp/)
資格の取得にかかる費用は、表の通りになります。 (2025年度日本看護協会Hp、生殖看護認定看護師教育課程募集要項参照)
受験料 | 50,000円(税込) |
入学金 | 50,000円 |
授業料 | 1,050,000円 |
修了認定試験審査料 | 50,000円 |
審査料 | 51,700円(税込) |
認定料 | 51,700円(税込) |
日本看護協会では認定看護師養成のための奨学金の貸与も行っています。奨学金については日本看護協会から認定看護師教育課程奨学金のホームページをご参照ください。(https://www.nurse.or.jp/nursing/scholarship_subsidy/scholarship/scholarship_nintei/index.html)
日本看護協会が定める認定看護師の役割として、以下の3つの役割があります。
1) 個人、家族及び集団に対して、高い臨床推進力と病態判断に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて水準の高い看護を実践する。(実践)
生殖看護における実践とは、不妊治療だけでなく思春期の性や、更年期における生殖機能の変化などに関する専門的な知識と技術をもって、患者さんと家族へ最適なケアを提供することをいいます。
不妊治療中の夫婦やカップルに対しては、不妊治療の進め方や治療方法、治療する時期などを患者さん自身が納得して選択できるよう、データや症例などの情報提供を行います。また、心身に負担がかかる治療であるため、夫婦やカップルの悩みやストレスに寄り添い、自己決定を尊重したケアを行うことも実践の一つになります。さらに不妊治療後の妊娠・分娩・産褥・育児期や更年期を健康に過ごすことができるように治療中からサポートすることも重要な役割となります。
思春期の性教育においては、妊娠や避妊に関する正しい知識を提供し、主体的に性に関する意思決定ができるような支援を行うことが必要です。
更年期においては、ホルモンバランスの変化による身体的、精神的な不調に対し、 適切な情報提供や相談支援を行います。
また、がん治療による生殖機能への影響など、特定の疾患や治療に伴う生殖に関する問題に対しても支援を行います。
2) 看護実践を通して看護職に対し指導を行う。(指導)
指導とは、他の看護師への最適なケアの方法や情報提供の仕方などを指導することをいいます。
不妊症や不妊治療についての知識や技術を指導するだけでなく、不妊治療に不安や悩みを抱える患者家族への声のかけ方なども助言します。
3) 看護職等に対しコンサルテーションを行う。(相談)
相談とは、他職種と連携し、適切な看護ケアを検討することをいいます。
患者家族が望む治療が選択できるよう、不妊治療に関わる医師や臨床検査技師など、さまざまな職種と連携して相談しやすい支援体制をつくります。
生殖看護認定看護師は、実務経験を経たうえで、教育機関での研修も行い資格習得を行う必要があります。そして資格取得後も不妊治療に悩む夫婦やカップル、思春期から更年期の女性に対して幅広く適切なケアを提供する役割があります。専門分野だからこそ求められる役割も大きくなりますが、その分女性や家族の一生に寄り添うことのできるプロフェッショナルとなります。不妊や生殖の問題に悩む女性が増えている現代において、助産師が認定看護師になることは、女性により深く寄り添い、支えられる強みともなります。ぜひ生殖看護認定看護師が気になる、なってみたいという方は検討してみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
1.子ども家庭庁 結婚に関する現状と課題について
2.公益社団法人 日本看護協会
https://www.nurse.or.jp/nursing/qualification/vision/cn/index.html
3.生殖看護分野 認定看護師教育課程 英ウィメンズクリニック・大阪信愛学院大学 生 殖看護認定看護師教育研修センター
4.日本生殖看護学会