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2025

分娩費用保険化による医療現場への影響|助産師が考える未来

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  • 自費
  • 分娩保健化
SUMMARY
この記事でわかること
「2026年から、出産費用が保険適用・実質無料になるかもしれない」出産費用の負担が軽くなるのは喜ばしいことのように思えますが、実は医療現場ではさまざまな課題が指摘されています。 この記事では、現役助産師の視点から、この制度変更が私たちの出産環境にもたらす影響について、メリット・デメリットの両面から詳しく解説していきます。

2026年から分娩費用の保険適用化が検討されているという話題が、医療現場で大きな注目を集めています。
この制度変更は、少子化対策の一環として提案されていますが、実際にどのような影響があるのでしょうか。
現場で働く助産師として、この制度変更がもたらすメリットとデメリット、そして私たち助産師や医療従事者への影響について詳しく解説していきます。


分娩費用の保険適用とは

分娩費用の保険適用とは、出産にかかる費用を国民健康保険で負担する制度です。
現在の日本では、帝王切開手術には保険が適用されていますが、正常分娩については病気やケガではないという理由で、全額が自己負担となっています。

2026年からは、この正常分娩にも保険を適用するか、もしくは実質的な無償化を実施する方向で検討が進められています。


制度導入の背景

①深刻化する少子化問題

この制度が検討されている最大の理由は、急速に進む少子化対策です。
2023年の合計特殊出生率は1.20と過去最低を記録し、この傾向は年々加速しています。
国としても、経済的な理由で出産を躊躇する方々への支援を強化する必要性に迫られています。

② 国際比較からみる日本の現状

先進国の中での日本の位置づけを見てみると、以下のような状況があります

イギリス:NHSによって妊娠から出産、入院費まで全て無料
ドイツ:基本的な医療費が無料
フランス:公立病院での出産は妊娠7ヶ月から産後6ヶ月まで100%保険でカバー 
一方、アメリカでは保険未加入の場合、100万円以上の費用がかかることもあり、各国で大きな差があります。






保険適応により期待される効果

 新制度により期待される効果は大きく分けて二つあります。

1つ目は、所得に応じた負担額の設定です。
高額療養費制度が適用されることで、医療費の支払いが所得に見合った金額となり、たとえ高額な医療費が発生したとしても、一定額以上の負担を心配する必要がなくなります。保険に加入していれば、その内容に応じて保険金が支給されることも期待できます。

2つ目は、地域間格差の解消です。
現状では、出産費用が地域によって大きく異なっており、令和5年度の調査では、最も高額な東京都が625,372円、最も低額な熊本県が388,796円と、約24万円もの差が生じています。
全国平均は506,540円となっていますが、この差は居住地域による不公平感を生んでいます。
保険適用により、どの地域で出産しても同程度の費用負担で済むようになることが期待されています。


制度変更に伴う課題

患者側の課題

新制度への移行に伴い、患者側にもいくつかの課題が浮上しています。

まず、実質的な負担額の変化については、高所得者層では現行制度よりも負担が増える可能性があります。また、高額療養費は1ヶ月単位での計算となるため、月をまたいでの出産時には予想以上の負担が発生する可能性があります。

さらに、現行の出産育児一時金(50万円)が縮小されるか廃止される可能性も考えられ、実質的な経済的負担は大きく変わらない可能性があります。

加えて、サービスの質への影響も懸念されています。
これまでの自由診療では、各医療機関が独自のサービスを提供することができましたが、保険診療化により、そうした柔軟なサービス提供が制限される可能性があります。

具体的には食事(おやつや夜食、お祝膳等も含む)産前産後のケアとしてヘッドマッサージやエステ、ヨガなど様々なサービスがあり、産院独自の強みとなっていました。
それらも保険適応になることで、妊産婦の個別ニーズへの対応が難しくなると予想されます。






医療機関側の課題

医療機関側では、まず経営面での影響が大きな課題となっています。
出産は24時間365日いつでも対応できる体制が必要で、そのための人員確保やオンコール体制の維持が不可欠です。

近年の働き方改革による人件費の増大、医療機器の高騰、光熱費や建物維持費の上昇など、経費は年々増加傾向にあります。

実際の現場の状況を見ると、令和4年4月の時点で44.5%の施設が価格改定による増額を実施しており、さらに今後の増額を予定・検討している施設が合計で53.9%に上ります。
これは、現状でも経営維持が困難な状況にあることを示しています。

保険適用化に際しては、こうした実態を踏まえた十分な保険点数の設定が必要不可欠です。十分な補助がない場合、医療機関の閉院につながり、結果として出産できる場所が減少するという本末転倒な事態を招きかねません。






保険適用化は、確かに出産への経済的ハードルを下げる可能性があります
しかし、医療機関の経営や医療の質の維持という観点からは、慎重な制度設計が必要です。

現在、国は産科医師や助産師など、現場の専門家からの意見収集を行っている段階です。

医療現場の実情や妊産婦の多様なニーズを踏まえた制度設計が望まれます。
私たち医療従事者としても、安全で質の高い出産環境を維持しながら、より多くの方々が安心して出産できる環境づくりに貢献していきたいと考えています。


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