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2026

産婦人科でよく使われる漢方薬|助産師が知っておきたい妊娠期・授乳期に安心な漢方と避けるべき漢方

  • 漢方
  • 妊娠期
  • 授乳期
SUMMARY
この記事でわかること
妊娠中は、女性の体と心が大きく変化する時期です。ホルモンの影響で体調が不安定になったり、つわりや便秘、冷えやむくみといった不調に悩まされたりする妊婦さんは少なくありません。さらに、妊娠前にはあまり感じなかった不具合が顕著に出てきて「どうしたらいいの?」と戸惑うケースも多いでしょう。 そのようなとき、医療の現場で選択肢のひとつとなるのが「漢方薬」です。漢方薬は自然由来の生薬を組み合わせた処方で、妊娠・授乳期でも比較的安全に使えるものがあります。一方で、「種類が多すぎて覚えられない」「妊娠中に飲んでいいものとダメなものの区別が難しい」と感じる方も多いのではないでしょうか。 この記事では、助産師として知っておきたい「妊産婦によく使う漢方薬」について、特徴や症状別の代表的な処方、注意点などを整理しました。臨床の場で妊婦さんから相談を受けた際や、自分自身の理解を深めたいときの参考にしてください。

漢方薬の特徴 ― 3つのポイント

漢方薬の最大の魅力は「人それぞれに合わせられる」という柔軟性です。ここでは代表的な3つの特徴を確認しておきましょう。

1つ目は、患者ごとに合わせた処方ができること。

同じ「つわり」でも、吐き気が強い人もいれば、胃のムカつきが主な人もいます。漢方では体質や症状の組み合わせを総合的に見て処方が変わるため、西洋薬よりもオーダーメイド性が高いのです。

2つ目は、妊娠・授乳期でも使える薬があること。

もちろん全てが安全というわけではありませんが、自然由来の生薬で比較的安全に使える処方も存在します。例えば「当帰芍薬散」や「小半夏加茯苓湯」は妊娠中にも使いやすい代表例です。

3つ目は、複数の症状を同時に改善できること。

漢方薬は単に症状を抑えるだけでなく、体全体のバランスを整えることを目的としています。そのため「冷え」「むくみ」「倦怠感」といった複数の訴えを同時に改善することが可能です。再発予防につながることも大きな強みといえるでしょう。

症状別・妊娠期によく使う漢方薬

それでは実際に、妊産婦に出やすい症状と代表的な処方を整理していきましょう。

① つわり・胃の不快感

  • 小半夏加茯苓湯:吐き気やつわりによく使われます。水分代謝を整えて胃のムカつきを軽減。
  • 六君子湯:胃腸が弱く、食欲不振が続くタイプに。胃腸を元気にして消化吸収を助けます。
  • 半夏厚朴湯:のどのつかえ感や気分の落ち込みを伴うつわりに。ストレス関連の不快感にも処方されます。

② 便秘

  • 大建中湯:腸を温めて蠕動を促す処方。妊娠中の便秘だけでなく、帝王切開後のイレウス予防にも使われることがあります。

③ 冷え・むくみ

  • 当帰芍薬散:冷え性で体力のないタイプに。血流を良くしてむくみも改善。妊婦さんに処方される頻度が高いスタンダードな薬です。
  • 五苓散:体内の水分バランスを整える作用があり、むくみに対応します。

④ 泌尿器トラブル(膀胱炎など)

  • 猪苓湯:排尿痛や頻尿に。妊娠中は免疫が落ちて膀胱炎になりやすいため、覚えておきたい処方です。

⑤ 風邪症状

  • 麦門冬湯:咳が長引く風邪に。痰の絡む咳や空咳にも対応。
  • 小青竜湯:鼻水・くしゃみ・アレルギー性鼻炎に。妊娠中でも使いやすいのが強みです。

⑥ 貧血・体力低下

  • 十全大補湯:全身の倦怠感や食欲不振に。体力を補う処方です。
  • 人参養栄湯:十全大補湯に近い効能で、特に精神的な疲労感が強いときに使われます。

妊娠中に避けるべき漢方薬

一方で、妊娠中は控えるべき漢方薬も存在します。

子宮収縮を促す可能性のある「大黄」「桃仁」「紅花」などを含む処方は要注意。

  • 桃核承気湯:月経痛や便秘に使われますが、妊娠中はリスクがあるため避けます。
  • 牛車腎気丸:腰痛やしびれに使われますが、妊婦には不向き。
  • 桂枝茯苓丸:月経不順や下腹部痛に使われる代表的処方ですが、妊娠中は禁忌です。

また、風邪薬として知られる麻黄湯も注意が必要です。エフェドリンを含み、流産リスクを高める可能性があるため妊婦には推奨されません。

婦人科でよく使う漢方薬

妊娠期に限らず、女性のライフステージ全般で処方される漢方もあります。

  • 抑肝散:イライラ、不眠、神経の高ぶりに。
  • 女神散:更年期の不調や月経関連症状に。
  • 加味逍遙散:冷えやイライラ、肩こりなど多彩な症状に対応。
  • 苓桂朮甘湯:めまいや動悸、水分バランスの乱れに。
  • 柴苓湯:むくみや月経不順に使われることがある。

これらは女性特有の不調に寄り添う処方であり、婦人科領域では非常によく使われます。

まとめ

漢方薬は、妊娠・授乳期に起こりやすい不調に幅広く対応できる強力な味方です。

西洋薬だけではフォローしきれない「冷え」「体力低下」「心身のバランスの乱れ」といった症状にも寄り添えるのが大きな魅力です。

ただし「自然由来だから安全」と思い込むのは危険で、子宮収縮を促す成分や、妊娠中は避けた方がよい成分を含む漢方も存在します。助産師や医療者が正しい知識を持っていることで、妊婦さんが安心して治療に取り組める環境を整えることができます。

漢方薬を知っておくことは、妊婦さんへのケアの幅を広げるだけでなく、治療全体の理解を深めることにもつながります。ぜひ日々の実践に活かしてみてください。


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