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助産師が押さえておきたい産後出血の原因と対応|4T分類と初期対応フローチャートを解説
- 産後出血
- 4T分類
- 周産期合併症
産後出血とは?
産後出血(postpartum hemorrhage:PPH)は「分娩後24時間以内に500mL以上の出血」と定義されています。帝王切開では1000mL以上を基準とすることもあり、いずれも臨床での判断に直結する大切な基準です。助産師は分娩後、胎児計測や胎盤計測などと並行して出血量のカウントを行います。「思った以上に出血しているかもしれない」という意識を持って、出血量を過小評価してしまわないように出血量を正確にカウントすることが大切です。分娩時に使用するシーツやガーゼは重量をあらかじめ測定し、スタッフ内で共有しておくと産後出血が起こった際に出血量の評価を素早く行うことができます。なるべく早く産後出血への初期対応を開始できるように、出血量が500mlまたは1000mlを超えている、超える可能性があると判断したら現在までの出血量とともに医師へ報告しましょう。また初期対応にあたる人員を確保するためにスタッフへの報告・連絡も忘れないようにしましょう。
産後出血の原因
産後出血の原因は、臨床的に「4T分類」で整理されます。これはTone(子宮収縮不全)、Tissue(胎盤遺残)、Trauma(産道損傷)、Thrombin(凝固異常)の頭文字を取ったもので、産後出血の原因を推測する際に用いられています。
Tone(子宮収縮不全)
最も多い原因です。ほとんどの場合、胎盤が剥がれた部位からの出血は、子宮が十分に収縮することで自然に止血されます。しかし、子宮筋が弛緩していると止血されず出血は持続します。これを弛緩出血と言います。
子宮収縮不全のリスク因子には多胎妊娠、羊水過多、巨大児、子宮筋腫など子宮筋が過度に伸展している・収縮を阻害する病変があることや、分娩の遷延、分娩直前までの子宮収縮抑制薬の使用など疲労や薬効による収縮不全によるものがあります。子宮底を触診し、子宮が柔らかい、子宮底が上昇している状態であれば収縮不全が疑われます。
Tissue(胎盤遺残)
胎盤や卵膜が子宮腔内に残存していると、子宮の収縮が妨げられて出血が続きます。胎盤計測を行う際に胎盤が完全に娩出されているかどうか、付着部位に異常がないかを確認し、欠損が疑われる場合には医師へ報告しましょう。胎盤遺残のリスク因子には子宮手術歴(帝王切開や筋腫核出術、流産手術など)、高齢妊娠、不妊治療(特に体外受精)による妊娠、過去の胎盤遺残の既往、胎盤付着位置異常(癒着胎盤、嵌入胎盤、穿通胎盤、前置胎盤など)、副胎盤、急速遂娩などが挙げられます。胎盤の剥離が困難で用手剥離を行った際にも注意が必要です。
Trauma(産道損傷)
分娩に伴う損傷が出血源となります。会陰裂傷、腟壁裂傷、子宮頸管裂傷、子宮破裂などが含まれます。産道損傷からの出血は多くが動脈性であり、短時間で出血量が増加する危険があります。子宮が収縮していても鮮紅色の出血が続く場合は産道損傷を疑い、医師に報告する必要があります。
Thrombin(凝固異常)
血液凝固の異常によって止血が進まず、出血が止まりにくい状態です。凝固異常を引き起こす疾患にはDIC、HELLP症候群、常位胎盤早期剥離などがあります。出血がにじむように続く、あるいは止血が得られない場合は凝固異常を考えます。凝固異常による出血である場合には子宮収縮薬に加えてトラネキサム酸や血液製剤(新鮮凍結血漿、フィブリノゲン濃縮製剤、血小板輸血など)の補充が必要になることもあります。
初期対応の流れ(フローチャート)
産後出血に直面した際、助産師は「医師への報告」と「観察」、「処置」を同時並行で行う必要があります。
出血量の評価と報告
出血量は視覚的な印象だけに頼らず、ガーゼやナプキンの重量を測定したり、吸引ボトルの容量を確認したりして数値化します。報告の際は「500mL」といった具体的な数字で伝えることが大切です。「今、どのくらい出血しているのか」をチーム全体で把握することで輸血や搬送の可能性などを見据えながら処置にあたることが可能になります。
子宮収縮の確認と処置
子宮底を触診して収縮を確認し、弛緩している場合は子宮底マッサージを行います。膀胱の充満が子宮収縮を妨げることがあるため、必要に応じて導尿やバルンカテーテルの留置を行います。尿量も母体の全身状態の評価に重要であるため、出血量とともに時間毎に観察しましょう。必要に応じて施設毎のマニュアルや医師の指示に従い、輸液を急速に投与できるように静脈路を追加で確保することもあります。
母体の全身状態の観察
血圧、脈拍、呼吸数、SpO₂などのバイタルサインを測定し、連続的にモニタリングします。顔色や意識状態、皮膚の冷感など全身の観察も並行して行います。ショックインデックス(SI:shock index)の変化も忘れずに確認しましょう。
迅速なチーム連携
医師や他のスタッフに速やかに報告します。「出血量」「子宮収縮の状態」「バイタルサイン」「SI」など簡潔に報告し、いつどんな処置を行ったのか記録することも大切です。迅速な対応・連携を行うために必要となる薬剤や器材をあらかじめ準備しておくことや日頃からシミュレーションしておくことも大切です。
搬送の判断
出血が持続し、ショックの兆候(頻脈、血圧低下、意識レベルの低下など)が認められる場合は、高次医療機関への搬送が必要です。処置にあたっている医師は時間の経過を確認することが難しいこともあります。チーム全体でしっかり出血量や時間の経過を声に出して共有し、判断の遅れが生じないようにしましょう。
産後出血は、母体死亡の主要な原因となる重篤な合併症です。しかし、助産師が医師やスタッフとチームで迅速かつ適切に対応することで、多くのケースで重症化を防ぐことができます。原因を4T分類(Tone・Tissue・Trauma・Thrombin)で整理して理解しておくと、原因の推定や対応の優先順位づけがしやすくなります。「出血量を数値で把握する」「子宮収縮を確認しマッサージを行う」「母体の全身状態を継続的に観察する」「医師に簡潔に報告しチームと連携する」「必要に応じて搬送を判断する」という初期対応の流れを把握し、「こういう状態になったら搬送する」という基準を施設毎に明確にしておくことも大切です。緊急時に慌てず冷静に対応するためには、日頃行っている物品の補充や器械の点検なども緊急時の対応に繋がっていることを意識し、繰り返しシミュレーションすることが大切です。助産師としていざという時に母体と家族を守るために観察する力や判断力を日々磨いていきましょう。
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