
赤ちゃんや幼い子どもの鼻水や鼻づまりに悩む保護者から、臨床やケアの現場で相談を受ける機会が増えています。 「おうちで鼻水を吸ってあげたほうがいいのでしょうか」 「家庭用吸引器はたくさんあるけれど、どうやって選んでケアしたらいいですか」と聞かれたとき、 私たち助産師として、その根本的な理由やコツを根拠を持ってわかりやすく説明できているでしょうか。
産後ケアの対象が1歳まで拡充されたことで、助産師を取り巻く現場の状況は大きく変化しています。 これまで主だった新生児期や授乳のケアに加え、離乳食の進め方や歯のケア、そして赤ちゃんの鼻水・鼻づまりに関する具体的な相談を受ける機会が急増しているのです。
しかし、助産学校のカリキュラムの中で鼻水ケアを体系的に教わる機会は多くありません。 そのため現場では、存在は知っていても「なぜ吸うのか」「どう選ぶべきか」を根拠を持って説明できないという、知っていると説明できるの間のギャップが生じがちです。
今回訪ねたのは、家庭用電動鼻水吸引器「メルシーポット」を展開するシースター株式会社です。 じょさんしnavi代表の柏村(助産師9年目)と編集部の谷口(助産師20年目)が取材を行いました。 同社代表取締役の山藤さんと広報部の飯嶋さんにお話を伺い、ものづくりの原点と熱い想いに触れてきました。
単に便利な育児グッズの紹介にとどまらず、「なぜ今、赤ちゃんの鼻水を吸うのか」という根本的な意味。 そして、道具が持つ本来の価値を最大化して保護者へ手渡すための視点を詳しくお伝えします。
現代の育児環境において、助産師として知っておきたい気になる実態があります。 耳鼻科の専門医の見立てとして「最近は4歳になっても自分でうまく鼻をかめない子が増えている」ということです。
SNSなどで情報が溢れかえっている現代、保護者たちは日々さまざまな選択に迷っています。 「何が正しい情報なのか分からない」「どれを信じればいいのか分からない」という厳しい環境の中で、保護者たちは一人で子育てに奮闘しているのです。
生後まもない赤ちゃんから3歳頃までの子どもは、大人と比べて鼻の構造がストレートで鼻腔も狭い特徴があります。 また、まだ自分でうまく鼻をかむことができないため、鼻水が溜まりやすく、鼻づまりを起こしやすい特徴があります。
鼻づまりが放置されると、おっぱいやミルクを飲むときに息が苦しくなってむせたり、授乳が中断したりします。 さらに夜間に息苦しさで何度も目が覚めてしまい、赤ちゃんのぐずりや不機嫌だけでなく、保護者の睡眠不足や疲弊にも直結してしまいます。
だからこそ、医療の専門職である助産師の役割が非常に重要になります。 単に「鼻水を吸うと楽になりますよ」と伝えるだけではなく、「なぜ鼻水を吸う必要があるのか」を解剖生理や生活の質と結びつけて正しく理解し、根拠を持ってアドバイスしていきましょう。
シースターは来年創業40周年を迎える歴史ある企業です。 創業者の時代から続く最初の25年間は、偽札検知機やパルスオキシメーターなどを手掛ける医療・センサー機器の専門メーカーでした。 台湾国鉄の踏切センサーや、駅ホームの人感センサー、ALS患者向けの意思伝達装置など、高度な技術で社会を支えてきた実績を持っています。
その技術力を誇るシースターが、ベビー向けの鼻水吸引器を開発することになったきっかけ。 それは、ある医療従事者から同社へ届いた1本の問い合わせ電話でした。 「そちらで扱っている痰の吸引器で、子どもの鼻水を吸ってもいいですか」という質問です。
当時は、保護者が口でチューブを咥えて吸い出す「口吸い型」の鼻吸い器などが主流でした。 しかし、大人が息を直接吸い込むことで、子どものウイルスや菌が大人の口に入り、風邪がうつってしまう二次感染の課題があったのです。 また、手動では十分に吸いきれず、何度も小児科や耳鼻科へ通院を繰り返す家庭の負担も非常に大きい状態でした。
「家庭で衛生的かつ安全に鼻水を吸える電動機器が必要だ」と同社は確信しました。 安全な吸引圧や形状を追求し、研究開発に約5年もの歳月を費やして、2011年に日本で初めての家庭用電動鼻水吸引器を世に送り出したのです。
💬 柏村 「センサー機器の専門メーカーであるシースターが、ベビー向けの鼻水吸引器に着目したきっかけは何だったのでしょうか? 」
山藤社長 「当時は、お口で吸うタイプの鼻水吸引器による感染リスクへの不安や、毎日の通院負担、鼻水が原因となる中耳炎などに悩むご家庭が多くありました。
赤ちゃんは自分で鼻をかむことができないため、鼻づまりは授乳や睡眠にも影響します。
母乳をしっかり飲み、十分な睡眠をとることは、乳児期の健やかな成長を支える大切な要素です。成長過程において、栄養や睡眠などの生活環境を整えることは、赤ちゃん自身の健康を支える基盤になります。
小さい頃から家庭で適切なケアを取り入れることで、赤ちゃんの健やかな成長を支え、保護者の育児負担を少しでも軽減したい。
そんな想いから、5年の開発期間をかけて、家庭で安全に使いやすい鼻水吸引器を開発しました」

メルシーポットの最新モデルとして登場した「S-505」。従来品の吸引力を活かしながら、大幅な小型化と軽量化に成功しています。

従来のS-504は高い吸引圧が魅力である一方、長いチューブやパーツを洗う手間が保護者の負担になることが課題でした。 そこでS-505では技術革新により、お手入れの手間を劇的に減らす構造を実現したのです。 日常的に洗うパーツは「シリコンノズル」と「鼻水収集カップ」の2点だけに絞り込まれました。

本体は丸みのある可愛らしいフォルムで、ボタンひとつのシンプル操作や、誤作動を防ぐ天面の長押し電源を採用しています。 さらにコンセントでの使用だけでなく、Type-Cと乾電池の両対応により、寝室や車内、帰省先などでも場所を選ばず使えます。
製品の価格を抑えているのも、同社が掲げる「Creative First 」の信念によるものです。 物価が上がる現代において、「経済的な理由で買えないご家庭を作らないため」という強い想いから、高い品質を保ちながら手に取りやすい価格で提供されています。
💬 柏村 「従来のS-504をご愛用されているご家庭も多いですが、S-505との違いや案内方法はどう考えたらよいでしょうか?」
山藤社長 「S-505はS-504の型落ちや上位互換ではなく、利用シーンによる使い分けです。 最高の吸引圧を求めるならS-504。 お手入れの手軽さや持ち運びやすさを重視するならS-505といった形ですね。 ご自宅用と外出用で2台持ちされているご家庭もいらっしゃいます」

💬 谷口 「初めて使う保護者の中には、ノズルのサイズや吸い方に不安を感じる方もいらっしゃいますが、使い方の コツはありますか?」
山藤社長 「0歳から1歳半頃までは、細長い別売ノズルの『透明ロングシリコンノズル ボンジュールプラス 』がおすすめです。 見えている位置の鼻水を優しく吸い、それ以降は標準ノズルへ移行するとスムーズです。 奥まで入れすぎず 、密着させて短時間で吸うのがポイントですね」

鼻水を吸う際、モーター音や、息が止まるような感覚に驚いて泣いてしまう赤ちゃんもいます。 助産師が現場で保護者の相談に乗る際のヒントについて、広報部の飯嶋さんにお話を伺いました。
💬 柏村 「『音が怖くて逃げてしまう』『吸うときに泣いて息が止まりそうになる』と心配される保護者には、どのようにアドバイスすると良いでしょうか?」
飯嶋さん 「『最初は怖がる子もいるので、無理に長く吸おうとせず、まずは短時間でサッと吸うところからで大丈夫ですよ』とお伝えするといいと思います。」
💬 谷口 「 私の一番上の子も、最初は音が怖くて逃げていました。病院で鼻を吸われるときは羽交い締めにされるほど嫌がっていたんです。子どもからすると、鼻を吸われると息が止まるような感覚になって怖いんですよね。
でも、自宅でメルシーポットを使い、短時間でサッと吸う経験を重ねていきました。すると『吸われている間も、息を止めずに口で呼吸できるんだ』ということに子ども自身が少しずつ慣れていったのです。徐々に吸引への恐怖心がやわらぎ、病院での鼻吸い嫌いまで克服できました。」
山藤社長は、助産師に向けたメッセージとしてこう強調します。 「なぜ鼻水を吸わなければいけないのかを知った上で吸ってほしい。 吸うことだけがメリットではなく、その先に何があるのかが分からないと意味がないのです」
赤ちゃんの鼻水を適切にケアすることは、単に鼻通りを良くするだけではありません。 鼻づまりを和らげることで、授乳や睡眠がしやすくなることにもつながります。そして何より、赤ちゃんの夜泣きや機嫌の悪さに向き合う保護者の、心と体の負担を少しでも軽くすることにもつながっています。
助産師が「ただ便利な家電だから」と勧めるのではなく、「なぜ必要なのか」という根拠と温かい言葉を添えて伝えること。 それによって、ひとつの道具が持つ価値が何倍にも広がっていきます。
保護者が一人で抱え込まず、安心して赤ちゃんと笑顔で過ごせるように。 これからの育児支援の現場で、メルシーポットという頼れる選択肢を優しく提案していきましょう。



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