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分娩期
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2024

【助産師なら知っておきたい】臍帯血ガス丸わかり!

  • 臍帯血ガス
  • 分娩介助の判断力UP
  • 早見表
  • 正常値
SUMMARY
この記事でわかること
臍帯血の血液ガス分析は、分娩前の胎児の低酸素状態や、アシドーシスの状態を評価するための指標になります。また新生児の蘇生や出生後の全身状態に大きく影響があるので、血ガス分析を理解できなければ生まれた赤ちゃんの重症度がわからないということになってしまいます。臍帯血の血液ガス分析を理解して、自分の分娩介助の判断の振り返りに活かし、分娩介助の判断力を向上させましょう!
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この記事の目次

結論

 臍帯血ガスで覚える数字はこの3項目のみ!

平均

正常範囲

pH

7.28

7.15~7.43

PCO2

49.2

31.1~74.3

HCO3-

22.3

13.3~27.5

臍帯血ガスを調べる理由

 血液ガス分析とは、血液の中に溶けている酸素や二酸化炭素を測定し、身体のバランスを判断することで、その人の全身状態を知る指標になります。

 胎児が母体に血液を送り返す臍帯動脈は、動脈といいながらも、実際は胎児の静脈血の成分です。そのため胎児の状態を反映している臍帯動脈の血液ガス分析を調べることで、分娩前後にストレスがあったかどうかを知ることができます。

 血液ガス分析により重度のアシドーシスがみられた場合、新生児仮死の状態であることが多いです。新生児仮死は出生時の呼吸・循環不全状態のことで、先天異常や未熟性がない場合の多くは、分娩前または分娩中の低酸素・虚血が影響していると考えられています。特に重度の新生児仮死の場合、身体中の臓器の機能障害が引き起こされてしまいます。特に中枢神経系では、低酸素性虚血性脳症による脳性麻痺、てんかんなど重篤な神経学的後遺症を発症することがあります。

 以上より、出生時の臍帯動脈血ガス分析によって重度のアシドーシスの存在を否定できれば産科的管理が正しかったと振り返ることができます。逆に重度のアシドーシスがあれば、低酸素・虚血による神経学的後遺症発症の可能性を考えることができ、新生児の集中管理にうつることができるため、重要な指標となります。

pHについて

 酸性に傾くことをアシドーシス、アルカリ性に傾くことをアルカローシスといいます。人間の体の中ではCO2、つまり二酸化炭素が貯留するとアシドーシスに、逆に二酸化炭素が減少するとアルカローシスになります。

 血液データでいうと、pHがアシドーシスかアルカローシスかを示し、それぞれの程度も判定している値になります。

 ヒトのpHの中性は7.4、正常であれば7.35〜7.45の間で保たれています。一方、臍帯動脈のpHの正常値は7.28、正常範囲は7.15-7.43です。胎児の臍帯血ガスは、一般的なヒトの中性値よりもアシドーシスに傾いているということです。臍帯血の pHが正常範囲よりも低下しているときは、長時間低酸素の状態だったことを表します。短時間の、例えば出生直前の急激な低酸素状態だけであれば、臍帯血のp Hはそれほど低下しないことがわかっています。つまり臍帯血のpHが低い時は、胎内でのストレスが大きかったということであり、胎児がアシドーシスの状態であると診断します。特に7.0未満は、児の状態がかなりよくないことを表しています。逆にpHが7.43を超える場合はアルカローシスと判断します。

パンダ先輩

誤って臍帯静脈血を測定した場合にもpHはアルカローシスになることが多いので、間違いなく臍帯動脈だったか確認することも大切です!

PCO2

 それでは2つ目に大事な項目、PCO2について解説します。PCO2は二酸化炭素分圧のことです。繰り返しになりますが、酸であるCO2が貯留していればアシドーシスに、逆にCO2が減少していればアルカローシスとなります。

 臍帯血のPCO2の平均値は49.2mm Hg、正常範囲は31.1〜74.3mmHgだよ。この正常範囲の上限を超えるとアシドーシスに傾いているということです。

 ただし注意したいことがあります。ストレスのかかっていない赤ちゃんでも、生まれたばかりはアシドーシスの状態なんです。アシドーシスの中でも、呼吸性アシドーシスに分類されます。

HCO3-

 アシドーシスは3種類あり呼吸性、混合性、代謝性に分けられます。

まず呼吸性アシドーシスについてですが、これは肺機能や換気が悪化することで、血液中に二酸化炭素が蓄積して起こります。代謝性のアシドーシスは、組織での低酸素や虚血が原因で起こります。混合性のアシドーシスはどちらも同時に起こっているアシドーシスです。

 ここから代謝性アシドーシスについて深掘りしていきます。血液ガスデータでは、換気をPCO2で表すように、代謝はHCO3-で表します。HCO3-は重炭酸イオンのことで、酸を中和する役割があります。つまり、血液の緩衝材的な役割を担っています。体が酸性に傾いているときに、過剰な酸を中和することで血液のpHを正常に維持することができます。

 HCO3-の平均値は22mmol/L、正常範囲は13.3〜27.5です。 HCO3-が正常範囲よりも低いと代謝性のアシドーシス、逆にHCO 3-が増加してれば中和しようとしているからアルカローシスへと傾きます。 

pH変化の原因

分類

pH ↓

HCO3− ↓

代謝性アシドーシス

PCO2 ↑

呼吸性アシドーシス

pH ↑

HCO3− ↑

代謝性アルカローシス

PCO2 ↓

呼吸性アルカローシス

BE

 最後にBEについて少しだけ話していきます。これはbase excessの略で、HCO3-の過不足を表しているだけの数字なので、他の3つに比べるとそこまで重要度は高くありません。

 BEは代謝性の因子の状態を表す指標の1つで、これまでに出てきたpHやPCO2、HCO3-などの数値から算出されます。簡単にいうと、正常な条件下で血液のpHをpHの正常値7.40へ戻すために必要な酸の量を表しています。BEがマイナスということは、酸が不要ということだから代謝性アシドーシス、プラスの場合は酸が必要ということだから代謝性アルカローシスと判断されます。

 生まれたばかりの新生児は全員、呼吸性アシドーシスの状態ですよね。そのためBEの平均値は-2.7とアシドーシスの状態です。正常範囲は -8.1〜-0.9で、−8.1より低いとアシドーシスがかなり進んでいることを表しています。

結論

 ここまで臍帯血ガスについてまとめてきましたが、重度なアシドーシスの基準となるpHは定まっていません。血液ガス分析の値が悪い時に、必ずしも予後不良というわけではないです。数値が悪くても、合併症なく発育する新生児もたくさんいます。それでも、血液ガス分析の正常範囲から逸脱している場合には、注意深く観察していくことで、急変などの状態変化に対応しやすい環境を整えることができます。

 また、臍帯血の血液ガス分析を見る、ということはただ生まれた赤ちゃんの状態を知ることだけではありません。分娩の経過を通し、自分のケアと分娩の進め方、CTGモニターの判読など、全てが適切であったかを振り返る指標になります。だからこそどんな経過のお産であったとしても、必ずパルトグラムやCTGモニターと一緒に血液ガス分析を振り返って、アセスメントしてください。そして次の分娩介助に活かすようにしていきましょう。

 今回まとめた内容を繰り返し、数値だけじゃなく理屈から知っておくことで、明日からの分娩介助の判断が格段にレベルアップすると思います!

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