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産褥期(育児)
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2025

【知らなきゃやばい】カウプ指数とは?計算式と基準値|助産師の基礎知識

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SUMMARY
この記事でわかること
赤ちゃんの体重や身長の増え方はママが特に気になる重要なポイントです。しかし、見た目や感覚だけでは順調な成長であるのか判断が難しいこともありますよね。この記事では、カウプ指数の定義や計算方法、具体的な活用法はもちろん、月齢ごとの平均値やママへの説明のコツ、そしてカウプ指数以外の体格評価の指標について解説しています。日々ママと赤ちゃんに向き合う助産師さん必見です。

 赤ちゃんの成長を見守るの中で、「体重は増えているけれど、これって太りすぎ?」「最近ミルクの飲みがいいけれど、ぽっちゃりしてきた?」「なかなか体重が増えなくて周りの子より小さくて、痩せている気がする…」「離乳食を食べてもらえなくて栄養面が不安」などママたちがふとした疑問や不安を口にすることは少なくありません。そんな時に、体重や身長の「数値」だけでなく、それらのバランスを見て評価できる体格指数が役立ちます。乳幼児期の体格評価には「カウプ指数(Kaup index)」がよく使われます。これは、赤ちゃんの体重と身長の関係から成長のバランスを数値化したもので、「やせすぎ」「太りすぎ」などの傾向を早期にキャッチできる便利な指標です。体重の増加に一喜一憂しがちな乳児期だからこそ、こうした客観的なデータを活用しながら、ママに寄り添った声かけができると安心感を提供できます。また、成長の途中にいる赤ちゃんの姿を多角的に見るという意味でも、カウプ指数の理解は助産師にとって大きな助けになります。

カウプ指数とは

カウプ指数(Kaup index)は、ドイツの小児科医カウプ博士によって考案された乳幼児用の体格評価指数です。生後3か月から満5歳までの乳幼児の評価に用いられています。乳幼児期の肥満は、将来的な肥満や生活習慣病に影響を及ぼす可能性があるとされています。大人はBMIを用いて肥満度を判断しますが、乳幼児に関しては発育状況を反映したカウプ指数を用いて評価するのが一般的です。まだ身体が柔らかく脂肪がつきやすい乳児期には、体重が重い=肥満、軽い=やせ、とは限りません。あくまで身長とのバランスを見て、その子なりの健やかな発育をしているかを判断する必要があります。

カウプ指数

カウプ指数の計算方法

カウプ指数 = 体重(g) ÷ [身長(cm) × 身長(cm)] × 10

カウプ指数は体重は「グラム(g)」単位、身長は「センチメートル(cm)」で計算されます。後に述べるローレル指数やBMIは「キログラム(kg)」、「メートル(m)」で計算されます。単位を間違うことがないように注意が必要です。


計算例1:生後6か月の男児

体重:7000g、身長:66cm

計算:7000 ÷ (66×66) × 10 = 約16.1(標準的)

計算例2:体重はしっかりあるが身長も高めな女児

体重:7500g、身長:69cm

計算:7500 ÷ (69×69) × 10 ≒ 15.7(やややせ〜標準)

見た目が「ぽっちゃりしている」と感じる赤ちゃんでも、実際には身長とのバランスがとれていれば肥満ではありません。見た目が「細い」と感じる赤ちゃんも同様です。このように数値として見ることで、主観的な印象と実際の成長バランスにズレがないかを確認できます。

評価基準

乳幼児は月齢や年齢によって発育状況が大きく異なるため、カウプ指数の基準値も年齢ごとに細かく定められています。乳幼児のカウプ指数を評価する際は、年齢に応じた基準値を照らし合わせて確認することが重要です。

年齢

評価基準

乳児(3か月〜1歳)

16〜18

幼児(満1歳)

15.5〜17.5

幼児(満1〜2歳)

15〜17

幼児(満3〜5歳)

14.5〜16.5

https://www.sukusuku.com/contents/qa/39439より引用

年齢とカウプ指数を照らし合わせて、基準より低ければ「痩せ気味」、基準に近ければ「普通(正常)」、基準より高ければ「太り気味」に分類されます。しかし、この分類はあくまでも1つの目安であり、肥満度を正確に評価できるものではありません。たとえカウプ指数が標準的な範囲に収まっていなくても、赤ちゃんの全体的な発育や背景を踏まえて判断することが必要です。

使い始める時期と注意点

カウプ指数は、生後3か月以降から使用されるのが一般的です。それ以前は、体重と身長の変動が大きく、個人差も非常に大きいため、数値としての信頼性が下がります。特に低出生体重児や早産児、医療的ケア児などの場合は、修正月齢を用いるか、他の観察指標と併せて評価する必要があります。

カウプ指数のメリット

カウプ指数は、成長スピードに個人差のある乳児(赤ちゃん)の発育をスムーズかつ客観的に確認できる点にメリットがあります。乳児の発育は人によって大きく異なり、生まれもった体格も異なるため、発育状況を見た目だけで瞬時に判断するのは困難です。しかし、カウプ指数を用いることで、赤ちゃんが太りすぎなのか痩せすぎなのかを明確に判断できる基準となります。さらに、カウプ指数は肥満度だけでなく乳幼児の栄養状態を把握する際にも役立ちます。

カウプ指数のデメリット

カウプ指数は年齢ごとに判定基準が異なっており、継続的な成長指数とするのは難しいという特徴があります。個々の成長傾向をカウプ指数のみで正確に把握することはできません。骨格や筋肉のつき方がそれぞれ異なっており、全く同じ子はいないからです。より詳細な発育状態を知るためには、ほかの指標とも組み合わせて使用し、さまざまな観点から子どもの成長状態を総合的に評価する必要があります。

カウプ指数以外の体格指数

ローレル指数

ローレル指数は、幼児期から18歳までの子供の成長をモニタリングするための指標として非常に重要です。

ローレル指数=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m)×身長(m))×10

ローレル指数

評価基準

100未満

痩せすぎ

100〜114

痩せ気味

115〜144

標準

145〜159

太り気味

160以上

太り過ぎ

成長曲線

成長曲線は、子どもの身長や体重の発育の進行を示すグラフで、個々の成長が標準的な成長パターンとどれくらい一致しているかを視覚的に確認できる指標です。母子手帳にも掲載されています。基本的に、グラフのX軸には年齢が、Y軸には身長または体重が設定されています。出生時からのデータをもとに、定期的に測定された身長・体重を成長曲線としてグラフ化し、成長スピードやその傾向を把握することが可能です。成長曲線上における位置が標準的な成長範囲内に収まっていれば、健全な成長が進んでいることを示します。反対に、標準範囲を大きく外れる場合には、成長発達を阻害する因子がないか確認し、成長発達を促す適切な対応が求められます。また「身長と体重が曲線のカーブに沿っているか」「体重の急激な増加または低下がないか」といった点もチェックが必要です。カウプ指数と比較して成長曲線はママにも視覚的に分かりやすい指標と言えます。

https://auxology.jp/ja-children-physique より引用

BMI(BODY MASS INDEX)

BMIは成人で広く使われる指標です。18歳以上の成人の肥満度や低体重の判定に用いられます。

BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))

日本肥満学会の判定基準

BMI値

判定

18.5未満

低体重

18.5〜25未満

普通体重

25〜30未満

肥満(1度)

30〜35未満

肥満(2度)

35〜40未満

肥満(3度)

40以上

肥満(4度)

世界保健機関(WHO)の判定基準

BMI値

判定

6未満

痩せすぎ

6〜16.99以下

痩せ

7〜18.49以下

痩せ気味

18.5〜24.99以下

普通体重

25〜29.99以下

前肥満

30〜34.99以下

肥満(1度)

35〜39.99以下

肥満(2度)

40以上

肥満(3度)

説明のポイント

体格指数に関する話題は、ママの心に響きやすく、不安や自己否定につながる場合もあるため、やさしく丁寧な伝え方が求められます。

よくある質問と答え方の例:

「体重が軽いんですけど大丈夫ですか?」
「身長とのバランスを見ると標準範囲なので、順調に成長していますよ。赤ちゃんの個性も大事にして見ていきましょうね。」

「体重が大きすぎると言われたことがあって…」
「カウプ指数では身長とのバランスが取れていますし、日常の活動も元気なら心配ありませんよ。」

「太ってるってことですか?」
「赤ちゃんの時期は脂肪がつきやすいものなので、ある程度ふっくらした見た目になることがあります。カウプ指数から見ると標準的ですよ。」

ママが安心できるよう、「指数はあくまで一つの目安」であり、「赤ちゃんの成長全体を見ながら考えていくこと」が大切だと伝えましょう。また私たち助産師も安易に体重や赤ちゃんの見た目だけで判断することが無いように意識することが大切です。ママにとって助産師は「赤ちゃんの専門家」です。「体重が増えすぎている」「飲ませすぎ」「体重が増えていない」「痩せている」などという言葉は時にママを傷つけてしまうこともあるでしょう。きちんと指標を示して、どうしてその判断をしたのか丁寧に説明することを心がけましょう。


カウプ指数は、乳児期の赤ちゃんの成長状態を「身長と体重のバランス」という視点で捉えるために非常に役立つツールです。日々の健診や育児相談、母乳外来、離乳食指導など、あらゆる場面で赤ちゃんの「今」を知る手がかりになります。ただし、数値だけを見て一喜一憂するのではなく、赤ちゃんの様子全体を見ながら、「その子らしい育ち」を支援していく姿勢が助産師には求められます。特にママへの声かけでは、育児への自信を持てるよう、安心できる言葉を選ぶことが大切です。

参考文献

https://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai/hatsuiku/index.files/katsuyou_130805.pdf

https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/2019youji_himan_G_2.pdf

https://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai/hatsuiku/index.files/jissen_2021_03.pdf

https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/2019youji_himan_G_ALL.pdf

https://auxology.jp/ja-children-physique

https://kennet.mhlw.go.jp/home

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