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2024
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妊娠期

妊娠中の姿勢でマイナートラブルを防ぐ!姿勢と呼吸の関係

    SUMMARY
    この記事でわかること
    妊婦さんの姿勢について考えたことはありますか?妊娠中に姿勢が歪むことは学生の頃に学習したと思いますが、日頃の業務で解剖生理に目を向けて妊婦さんへ保健指導ができている助産師は少ないのではないでしょうか。この記事では妊娠中の姿勢とマイナートラブルの関係について深掘りしていきます。

     今回は、一般社団法人マタニティトレーニング&ケア協会代表の山村美暖さんと一緒に臨月の運動について考えていこうと思います。山村さんは、もともとパーソナルトレーナーとして芸能界の方や医療者の方に向けたサポートをされていました。ご自身の第一子妊娠中にマタニティトレーニングを学ぶため、文化が進んでいるアメリカに渡り、本場アメリカのマタニティトレーナーの資格を取得。その後も論文をベースに勉強と実践を繰り返し、第2子では理想としていた「いきまないお産」も達成されています。

    腰痛改善のためにできるセルフケア方法

    じょさんしnavi柏村

    妊娠中にはたくさんのマイナートラブルがありますが、特に姿勢によるマイナートラブルが多いような気がします。一番多いのはやはり腰痛の印象ですが、骨盤ベルトを巻くなど外側からではなく内側からできるアプローチがあれば教えてください。

    山村

    私がおすすめしているのは、筋膜へのアプローチです。腰のあたりの筋膜は筋肉と同じようにギュッと縮んでしまいやすいです。また筋膜は痛みとすごく関連のある組織で、ほぐれているだけでも症状が改善しやすいです。筋膜というと難しいですが、イメージは脂肪の層と一緒です。腰のお肉をつかむようにマッサージすることをお勧めしています。ぎゅっとつかんで揺らしたり、お肉をつかんだまま体を前後左右に動かしたりするだけでもかなりほぐれます。あとは寝る前と起きたときに伸びをする、というのもシンプルですが効果的です。

    じょさんしnavi柏村

    そんなに単純なことでいいんですね。腰痛の原因は姿勢が悪いことだと思っているので、骨盤をたてなきゃ、骨盤を締めなきゃいけないと言ってきました。

    山村

    もちろん骨盤自体の歪みなども間違いではないです。

    じょさんしnavi柏村

    そうなんですね。骨盤を締めるとか外側からの矯正も大事だし、筋膜を意識して内側からの対策も大切ということですね。

    山村

    その通りです。筋膜というと、体の奥深くにあるイメージをもつ方も多いですが、身体の表層にある筋膜へのアプローチは妊婦さんにとってすごく重要なんですよ。例えば「骨盤をたててもらいたい」「ベルトで骨盤を締めたい」という時に、筋膜という硬いレザージャケットを着てガチガチの状態だった時に、姿勢も維持しにくいし、矯正したとしてもすぐ元に戻ってしまうようなイメージです。表面の筋膜にはそのような役割があるので、骨盤の歪みだけではなく、筋膜が硬いことでより悪い姿勢になりやすいという原因も含まれています。

    じょさんしnavi柏村

    今流行っている筋膜リリースなどは妊婦さんにとって相性はどうなんでしょうか。

    山村

    フォームローラーのような筋膜のケアの仕方は筋膜を傷つけてしまうリスクがあります。他にもマッサージガンのようなものも同様です。効果を感じるようであれば続けても大丈夫ですが、筋膜を掴んで揺らしたり、掴んだまま身体を動かしたりするような筋膜のほぐし方のほうがよりリスクは少ないと思います。

    妊娠後期の息苦しさに対して

    じょさんしnavi柏村

    妊娠後期になるととにかく息苦しいとおっしゃる方が多いんですよね。そこにいつも、横になる、くらいの解答しかできずにいるのですが、フィジカルな視点から何かこの息苦しさを軽減できる方法はあるのでしょうか?

    山村

    横向きに寝ていただくのは非常に良いことです。「良い呼吸」で連想されやすいのは腹式呼吸だと思うのですが、呼吸の時に必ず動かなきゃいけない場所は肋骨です。肋骨は背骨の動きが悪くなると動きにくくなります。仰向けと比べて横向きで寝ている状態は、背骨を圧迫するものがないので背骨が動きやすく呼吸の苦しさを楽にすることができます。

    じょさんしnavi柏村

    なるほど。では、立っている姿勢で呼吸を楽にするためには、胸を張ることとかでしょうか?

    山村

    呼吸が浅い人に胸を張ってもらうというのは、よく連想されるのですが実は間違いなんです。妊婦さんの姿勢ってすごく特徴的で、一見猫背に見える人でも、実は背中は広がっているよりガチガチに固まっているという場合が多いです。巻き肩になっているから、肩を開かなきゃ、と思ってしまう方がいるんですが、マラソンの後に肩を開いて呼吸をする人はいないですよね。胸を張っている姿勢は人間にとって呼吸をしにくい状態ということです。

    パンダ先輩

    やってみよう!

    両腕を肩の高さに上げて、手を上に曲げ、目の前で肘と肘をくっつけてみましょう。この時、できるだけ高い位置でくっつけられるのが理想だよ。

    山村

    妊婦さんも産後のママも、巻き肩になっているのに肘をくっつけられない人が多いんですね。それは肩と一体になっている背中エリアがガチガチになっているのが原因で、だから呼吸も浅くなってしまうんですね。

    これはストレッチにもそのまま活かせる動きになります。ラジオ体操は胸を広げる形で息を吸いますが、妊婦さんの場合は背中を丸める時に息を吸うという動きになるのがポイントです。

    じょさんしnavi柏村

    妊娠中に息苦しいという妊婦さんへこのストレッチをしてもらえれば有効ということですよね。

    山村

    そうです。また、妊娠中の呼吸を楽にするためだけではなく、お産にも直結してきます。お産の時はいろんな呼吸法がありますしどの要素も大切だと思うのですが、私が大事だと思っているのはアウターの筋肉を使わないことです。

    出産の時の呼吸

    山村

    アウターの筋肉の代表例は腹直筋です。陣痛中に息をフーと吐く際、腹直筋を使ってしまうと疲れやすいんですね。そこの筋肉に血液ももっていかれるし、お腹を押す動きになるので赤ちゃんも苦しくなりやすいです。

    だからアウターの筋肉を使わないで呼吸を続けることが重要です。

    じょさんしnavi柏村

    なるほど。それじゃあ、どうしたらインナーの筋肉を使ってお産の呼吸に活かせば良いのでしょうか。

    山村

    インナーの筋肉を使えているのかチェックするのは難しいですが、アウターの筋肉を使っているかチェックする方法によってインナーの質を高めることができます。

    やってみよう!

    パターン1.指2本を腰骨のでっぱりから少し内側の下側のところに当てて、指を軽く押し込みます。この状態で息を吐く時にそこがモリッしてこないか確認しながら呼吸をするやり方です。押し返してくる場合はアウターの筋肉を使っている、押し返してこない場合はインナーの筋肉を支えているということです。正しくできているかどうか明確に分かるので、「正しくできているか分からないから続かない」という妊婦さんのモチベーション低下も防ぎやすいです。

    ぜひ妊婦さんや産後のお母さんへ、インナーの筋肉を使った呼吸について説明してみてください。

    妊娠中の姿勢によるマイナートラブルと、呼吸の時の身体の使い方についてまとめてきました。助産師でもなかなか身体の解剖生理を意識した知識は持っていなかった人も多いと思うので、ぜひ明日からの保健指導で活かしてみてください。また陣痛中の呼吸法についても、産婦さんの疲労を最小限にして児へもストレスのかかりにくいお産へするためにぜひ活用してみてください。

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