
避妊インプラント(Implanon®/Nexplanon®)は、長さ約4cm、直径2mmほどの柔らかいプラスチック製のスティックを、上腕の皮下に挿入する避妊法です。このスティックから有効成分であるエトノゲストレル(第3世代のプロゲスチン)が持続的に放出され、3年間にわたり高い避妊効果を発揮します。
特徴
インプラント挿入後24時間以内にホルモンの血中濃度が上昇し、その後はゆるやかに減少しつつも、約90pg/mL前後を維持して避妊効果を保ちます。
1. 排卵の抑制(中枢作用)
プロゲステロンとプロゲスチンの違い
項目 | プロゲステロン | プロゲスチン |
種類 | 天然の黄体ホルモン | 合成プロゲスチン |
主な用途 | HRTなど | 避妊・月経困難症・インプラントなど |
特徴 | 短時間作用 | 長時間の安定作用が可能 |

メリット
デメリット・副作用
※副作用には個人差があるため、導入前の丁寧なカウンセリングが重要です。
2025年現在、日本では避妊目的でのインプラント(ニクスプラノン®)は未承認です。そのため一部のクリニックなどで輸入や研究段階での使用に限られています。しかし、WHOは避妊インプラントを「最も確実な長期避妊法の一つ」として推奨しており、アメリカ・イギリス・オーストラリアなどでは日常的に使用されています。今後の日本での導入に向け、医療者側の知識と準備が求められる分野です。
比較項目 | 避妊インプラント | ミレーナ(IUS) | 低用量ピル |
有効期間 | 約3年 | 約5年 | 毎日服用 |
エストロゲン | 含まない | 含まない | 含む |
授乳中の使用 | ○(6週~) | ○(8週~) | △(母乳量減少の可能性) |
主な作用 | 排卵抑制・頸管粘液変化 | 子宮内膜菲薄化・頸管粘液変化 | 排卵抑制・周期調整 |
月経への影響 | 不正出血・無月経 | 月経量減少・無月経 | 周期の安定化 |
利用者の負担 | 1回挿入でOK | 同上 | 毎日服用が必要 |
避妊インプラントは、若年層を含む幅広い世代にとって有効な選択肢となります。助産師がカウンセリングで提案する際には、以下のポイントを丁寧に伝えることが大切です。
避妊インプラントは、高い確実性と長期的な効果を持ち、現代女性のライフスタイルに適した避妊法のひとつです。日本ではまだ一般的ではありませんが、今後の導入が期待される方法として、助産師が正確な知識を持ち、適切なカウンセリングができることは、女性の自己決定を支える大きな力になります。「避妊は選べるもの」そう伝えられる助産師であるために、これからも新しい避妊法について学び、実践に活かしていきましょう。
参考文献
避妊インプラント(etonogestrel-releasing implant)の安全性・使用条件(WHO MECカテゴリー分類)などに関する情報
産婦人科診療ガイドライン - 婦人科外来編 2023
Merck/MSD社:Implanon®/Nexplanon®製品情報
日本における避妊インプラントの承認状況、適応外使用などに関する資料
病気がみえるvol.9 婦人科・乳腺外科 第5版





