
【助産師の必須知識】帝王切開の傷あとケアとテープの種類|傷あとを目立ちやすくしてしまう原因は?|退院指導で伝えたいこと
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1. はじめに
帝王切開後の傷のケアは、単なる傷の処置ではなく、母親の心身の回復とその後のQOL(生活の質)に深く関わります。中には「傷あとを見るのがつらい」「水着を着られなくなった」と自己肯定感に影響する方もいます。助産師が傷のケアの正しい知識を持ち、再現性のあるセルフケアの方法をわかりやすく指導することは、退院後も母親が安心して過ごすための鍵となります。今回はその中でも、特に重要な安静・清潔・保湿・テープによる保護の4本柱と、使用するテープやジェルシートの種類・特徴について詳しく解説します。
2. 傷あとを目立ちやすくしてしまう要因
帝王切開の傷が赤く盛り上がりかゆみを生じる肥厚性瘢痕や、かゆみが強く元の傷の範囲から大きくはみ出して広がるケロイドは、以下の要因によって悪化します。
機械的刺激:ショーツやズボン、抱っこひもなどの衣類との擦れ、腹部が左右に引っ張り合う伸展刺激
感染・炎症:浸出液の停滞や細菌の繁殖
乾燥:皮膚バリアの低下によるかゆみと掻破
紫外線:炎症後色素沈着を悪化させ、傷あとが固定化
体質:妊娠高血圧や女性ホルモンがケロイドの重症化に関与
この要因をできる限り避けることが、傷の治癒に直結します。

3. 創部ケアの4本柱と退院時に伝えたい基本ポイント
1)安静:張力を軽減する
Point 起き上がりや授乳時の動作に注意。腹圧を避けた体位変換をアドバイスします。
2)清潔:感染予防に努める
Point シャワーの度に石けんの泡でやさしく洗い、十分に洗い流します。テープ類の使用は決められた用法を守り、清潔に扱います。
3)保湿:掻破による傷や感染を防止する
Point 乾燥によるかゆみを防ぐため保湿を心がけます。
4)テープ保護:刺激・紫外線対策をする
Point 適切なテープを貼付し、物理的刺激と紫外線から創部を守ります。
傷のケアの期間については、傷の治癒過程を踏まえると最低でも3か月、可能であれば6ヶ月〜1年間ケアを継続することが望ましいです。
4. 傷あと保護テープ・シートの種類と特徴
傷あとテープを使用することで傷あとの要因となる伸展刺激や摩擦を抑えることができます。最近では販売箇所も病院やクリニックだけでなく、ドラッグストアやオンラインでも購入することができるので、ケアが継続しやすくなっています。
◯テープタイプ(紙・不織布) 例:アトファイン、医療用紙テープなど
- 出血や滲出液がなければ使用可能
- 1枚のテープで固定可能なテープもある
- 通気性があり、肌にやさしい
- 薄い肌色のテープで目立ちにくい
- 貼付したまま入浴もできる
- 安価で導入しやすい
- 販売店が多く購入しやすい
- かぶれる人もいる
交換頻度:5〜7日
◯フィルムタイプ(ポリウレタン) 例:アトレスケア、テガダーム など
- 浸出液や出血がなければ使用可能
- 防水性が高く創部が見える
- フィルムが薄く自然な貼り心地
- 蒸れや突っ張り感を感じる人もいる
交換頻度:2〜3日
◯シリコーンタイプ(ジェルシート・ジェルテープ) 例:Lady Care、good job me!、メピフォームなど
- 術後傷が閉じて乾いていれば使用可能
- テープタイプでかぶれる人はシリコンタイプが良い
- 毎日洗浄し、張り替えて使う
- 洗うことで粘着力が戻る
- 再使用可能で経済的
- 厚み重みがある
- コストが高め
- 保湿する場合は保湿剤が乾いてから貼付する
交換時期:貼付は1日12〜24時間が目安。3枚を交互に使用して1〜2ヶ月で交換。
5.退院時に伝えたいチェックポイント
- 貼付開始:傷が完全に閉じて乾いた頃(術後7〜10日)。
- ケア期間:最低3か月、できれば6〜12ヶ月継続する。
- 貼り方:傷を中央に皮膚を寄せるようにして、周囲2cm程度カバーして貼る。
- 交換目安:それぞれの貼付期間を守り、浮き・剥がれ・かゆみが出たら即交換する。
- 入浴時の注意:そのまま入浴可。
- 異常時対応:強いかゆみ・水疱は皮膚科受診、傷の赤み・硬さ増強は形成外科を受診する。
- 摩擦対策:ハイウエストの下着や腹帯の活用を提案する。
- 紫外線対策:夏季は日焼け止めと衣類で遮光する。
6. まとめ
帝王切開の傷のケアは、母親の身体的・心理的な回復を支える大切な看護です。助産師が正しい知識をもとに、安静・清潔・保湿・保護を中心としたケアをわかりやすく伝えることで、退院後に行うセルフケアが明確となり、母親の不安が軽減されることに繋がります。テープやシートの使用は手軽でありながら、張力を減らし摩擦や紫外線から守る効果的な手段です。セルフケアを継続できれば、肥厚や色素沈着を予防することが可能です。母親が自分の傷あとをどの方法でケアしていくか選択できるように、私たちは適切な提案をしていける知識を持ち合わせておく必要があります。母親が自分の身体をいたわりながら前向きに育児と向き合えるようにサポートしていけると良いですね。

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