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分娩期
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2024

【明日から使える助産師の知識】羊水過少の病態と看護|分娩時のポイントと注意点

  • 羊水過少
  • 管理入院
  • 分娩時のリスク
SUMMARY
この記事でわかること
 羊水過少は、妊娠中に羊水の量が正常範囲よりも少なくなる状態です。羊水は付属物として位置づけられていますが、妊娠期から分娩期まで胎児の成長と発達のために大切な役割を担っています。そのため羊水量の減少は、胎児の健康に様々な影響を及ぼす可能性があり、適切な診断と管理、観察が重要です。この記事では羊水過少の病態生理から看護のポイント、分娩時の注意点についてまとめました。

 羊水は、胎児が胎内で成長していくために必要なスペースを提供していますが、羊水の役割はそれだけではありません。胎児が自由に動ける十分なスペースは、手足を伸ばしたりして動かしながら筋骨格系の発達を助ける作用があり、外部からの衝撃を和らげ胎児を保護するクッション効果があります。また、 羊水を飲み込んだり排泄することで、出生後に呼吸や消化機能がきちんと働くための練習ができる環境を作りだしています。他にも、胎児周囲の温度を一定に保ち、細菌の侵入を防いで胎児を感染から守る役割もあります。

 これら多くの役割がある羊水が、「少なくなる」ということは、胎児を保護したり、筋骨格系や呼吸・消化機能の発達が妨げられる状態になります。胎児の羊水過小が進行すると、重度の場合、胎児発育遅延や胎児機能不全のリスクも増加します。羊水過少は、胎内での胎児の成長発達への影響はもちろん、胎児の予後にも影響を及ぼす可能性があるため、羊水過少時の看護や分娩時の観察・ケアも確かな知識と技術が求められます。羊水過少の妊婦への看護のポイントと分娩時の観察について詳しくみていきましょう。

羊水過少の病態生理 

 羊水過少は羊水の量が通常よりも少ない状態で、原因は羊水の産生障害か羊水流出によるものに分けられます。症状としては、母体のお腹周りが小さいことや、胎動が少ないこと、羊水の流出があります。医師による超音波検査で、羊水過少の診断がつきます。

1) 診断

超音波検査で羊水指数(AFI: Amniotic Fluid IndexI)や最深垂直ポケット(MVP: Maximum Vertical Pocket)の測定により羊水量を評価し、診断します。羊水量の正常範囲は羊水指数(AFI)で5〜25cm最深垂直ポケット(MVP)で2〜8cmです。羊水過少の定義は、羊水指数(AFI)未満、もしくは最深垂直ポケット(MVP)が2cm未満のとき羊水過少症と診断されます。

2)羊水過少の原因

①胎児側の異常

  腎臓形成異常、多膿胞腎、尿路閉鎖などによって胎児が尿を生成・排出できないため、羊水の量が減少します。妊娠中期以降の羊水の成分は、胎児尿が大半を占めるため、先天的な泌尿器系の異常があれば、妊娠中期の比較的早い時期から羊水過少をきたします


②母体側の要因

 高血圧、妊娠糖尿病、脱水症、前期破水などが要因となります。母体の健康状態によって、胎盤への血流や栄養が十分に供給されないため、羊水量が減少していきます。前期破水は羊膜が破れて、羊水が外部に流出することで羊水過少となります。


③ 胎盤の問題

   胎盤機能不全や常位胎盤早期剥離などによって、胎盤が胎児に十分な血流や栄養を供給できないため、羊水の量が減少します。


④ 出産予定日を過ぎた妊娠

   羊水の量は妊娠30〜35週がピークで、その後は妊娠の進行とともに自然に減少する傾向があります。そのため、妊娠40週を過ぎた過期妊娠では、羊水の減少が顕著になることがあります。


⑤特定の薬物使用

  ACE阻害薬、NSAIDsなどの薬剤は、胎児の腎機能に影響があり、羊水の生成を低下させます。

管理入院時の看護のポイント

 羊水過少が認められた場合は、胎児管理のために入院が必要となったり、胎児の状態によって早期に分娩の方針となることがあります。

1) 定期的な胎児モニタリング 

 胎児心拍モニタリングを行って胎児の心拍数や予備能力を定期的に観察し、胎児除脈などの異常がないかを確認します。羊水過少の場合、臍帯が圧迫されやすいため、変動一過性除脈が出ることが多いです。また、母親由来の原因で羊水過少が起こっている場合は、胎盤への血流異常や胎盤機能の低下の可能性があるため、遅発一過性除脈の出現にも注意が必要です。胎児頻脈があれば、感染の可能性も考慮します。

 また、羊水過少のある胎児は子宮内胎児発育遅延や、先天奇形を有していることが多いため、超音波検査を行い、羊水量と胎児の状態を継続的に監視します。呼吸様運動が妨げられるため肺低形成が起こりやすく、胎動も減少することもあるため、BPSを用いて胎児のwell-beingを評価し、評価結果によっては分娩を考慮する必要があります。胎動の有無や強さなどの観察もしっかり行いましょう。

パンダ先輩

BPSは胎児の健康状態を評価するスケールだね。超音波検査で呼吸様運動・胎動・筋緊張・羊水量NSTによる一過性頻脈をスコアリングし、点数によって方針を決定するよ。

2) 母体の管理

 水分摂取は羊水量の維持に寄与する可能性があるため、脱水にならないように十分な水分摂取を促しましょう。子宮内圧が高まったり、感染などによって前期破水(preterm PROM)となり、羊水過少を引き起こした場合は、臍帯脱出の有無がないか確認が必要です。羊水の流出を防ぎ、羊水量を保つためにベッド上安静となるケースもあります。この場合は、母体の清潔ケアや褥瘡を起こさないためのケア、精神的ケアも必要になります。前期破水による羊水過少では、子宮内感染を引き起こし、絨網膜羊膜炎となる可能性もあるため、血液データや母体のバイタルサインの観察は必須です。抗生剤の投与も行われるため、アレルギーの確認もしましょう。絨網膜羊膜炎の診断がついたり、羊水過少によって胎児の健常性が疑わしい場合は分娩、緊急帝王切開術が行われます。

 羊水過少では、可能であれば妊娠34週までの妊娠の継続をはかり、妊娠34週で肺の成熟が認められれば分娩誘発となることもあります。羊水過少によって、早期の分娩が予想される場合には、胎児の肺の成熟を促すためにリンデロンの投与を行うこともあります。前期破水では子宮収縮を起こしやすく、切迫早産も併発していれば、切迫早産に対する治療も併用するようになります。リトドリンとリンデロンを併用する場合には、母体に肺水腫のリスクが生じるため、呼吸状態の変化も見逃さないようにしましょう。

3) 教育・説明と心理的サポート

 妊婦とその家族に対して羊水過少のリスクや管理方法についての情報を提供しましょう。羊水過少では、胎動の自覚が大切な観察項目になるため、胎動が弱くなったり、少ない場合は、ナースコールしてもらうよう説明しましょう。preterm PROMによる羊水過少では、母体への安静の指示が強くなることもあります。絶対安静の指示や病状、胎児の状況、入院管理などによって、ストレスを抱えることもあるでしょう。母体のストレスも血流量を減少させ、羊水量に影響を与える可能性があります。母体が安楽に過ごせる環境づくりに努めたり、不安や心配の軽減ができるような関係づくりが必要です。

4) 治療と看護

 羊水過少の本質的な治療はありません。必要に応じて羊水を補充するための羊水注入(羊水灌流)が行われることがあります。羊水注入の際は、感染に注意し、胎児心拍モニタリングと母体バイタルサインの観察を行います。穿刺後も同様に胎児と母体の状態を観察し、穿刺部の出血や疼痛、子宮収縮の有無を確認しましょう。

分娩時の看護のポイント

 基本的には入院管理の時の看護と大きな変わりはありません。ただし、分娩時は陣痛による子宮収縮の頻度が多くなるため、胎児へのストレスが増加します。そのため、分娩時には胎児と母体の状態を綿密に観察し、胎児機能不全に陥る前に緊急帝王切開などの医療介入を迅速に行うことが求められます。分娩時の前期破水(termPROM)においては、羊水過少の原因の半数を占めているため、前期破水と合わせてポイントをみていきましょう。

1) 胎児心拍数モニタリング

 分娩中は、継続して胎児心拍数を監視します。子宮収縮がないときに比べ、分娩時は陣痛によって胎児へのストレス負荷が増大し、羊水過少の場合はより臍帯圧迫が起こりやすい状況になります。変動一過性除脈や遅発一過性除脈などの胎児除脈となる可能性が高くなるため、監視の強化をした方がよいでしょう。必要時、体位変換や酸素投与、補液を行いながら、レベル分類を活用し、胎児の状態を評価しましょう。

2)母体の管理

  前期破水の時は、前述した入院管理の看護のポイントと同様、血液データで炎症反応の有無やバイタルサイン(体温、心拍数、呼吸数)に注意し、絨網膜羊膜炎を発症していないか観察しましょう。また、感染リスクを管理するための抗生物質が投与されることがあります。頻度は少ないですが、破水は羊水塞栓症のリスクもあることを頭の片隅に入れて観察しておくことも大切です。  

3)分娩進行の評価

   通常の分娩と同じように、陣痛の強度や頻度を観察し、適切な分娩進行であるか評価します。破水していれば、羊水の混濁や異臭の有無は胎児へのストレスの評価指標となります。羊水の色に変化はないかチェックし、羊水混濁があれば、分娩進行状況や胎児心拍モニタリングと合わせ、分娩方針を考慮しましょう。前期破水であれば、多くは24時間以内に陣痛が発来します。陣痛発来しない場合は、感染予防のためにも誘導分娩を行います。前期破水にて羊水の流出がしばらく続いていたが流出が止まった場合は、児頭が固定されたか、もしくは流出する羊水がほとんどなくなっている可能性もあります。児頭の下降度や羊水の流出量も観察し、今後のリスクや分娩進行をアセスメント、予測しましょう。羊水過少では児が肺低形成となり、出生後に重篤な呼吸障害をきたすことがあるため、児の対応が可能な施設での分娩が望ましいです。


 羊水過少は、胎児に先天性疾患が疑われ、予後が厳しいとされる場合があります。主に胎児の発育や健康に重大な影響を及ぼす可能性が高いため、母親や家族の胎児に対する心配や不安なども大きくなりやすいです。胎児の健常性の評価、観察はもちろんのこと、母親や家族への心理的なサポートも助産師の重要な役割となります。羊水過少時の看護のポイントや注意点を的確に押さえて観察し、少しでも不安を取り除けるような関わりができるといいですね。

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