【助産師は知らなきゃ損】臨月のウォーキングはメリットが少ない?!明日の保健指導に活かせる
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今回は、一般社団法人マタニティトレーニング&ケア協会代表の山村美暖さんと一緒に臨月の運動について考えていこうと思います。山村さんは、もともとパーソナルトレーナーとして芸能界の方や医療者の方に向けたサポートをされていました。ご自身の第一子妊娠中にマタニティトレーニングを学ぶため、文化が進んでいるアメリカに渡り、本場アメリカのマタニティトレーナーの資格を取得。その後も論文をベースに勉強と実践を繰り返し、第2子では理想としていた「いきまないお産」も達成されています。
じょさんしnavi柏村
よく陣痛を起こすためには散歩がいいと言われていますし、助産師の認識も同じです。しかし実際に多くの妊婦さんがこの言葉に苦しんでいる気がします。トレーナーさんの目線で、臨月の散歩は実際に効果があるものなのでしょうか?
山村
陣発のメカニズムはまだ解明されていないわけですが、ウォーキングをすることが陣発に効果があるというデータは確かに存在します。日本での研究で、1週間に5時間以上ウォーキングを行っていた妊婦より、5時間以下だった方たちの方が誘発分娩になる確率が低かったという結果があります。
じょさんしnavi柏村
そうなんですね。ウォーキングが陣痛を起こすのは間違っていないということですか。
山村
そうです。しかしここから話を派生させるときに気をつけたいのが、じゃあ臨月になったらとにかく歩いたらいいのか、という話になりますが、それはやっぱり極端な解釈で、歩数に注意してほしいです。成人の最適な1日の歩数は8000歩程度と言われています。1万歩以上は過度の域なんです。理由は股関節への影響が大きいのですが、一般的な成人ですら1万歩は多いと言われているのに、体重が増えて体が変化している妊婦さんにとってはもっと負担がかかりますよね。例えそれで陣痛がきても、股関節が心配になりますよね。
じょさんしnavi柏村
少し話はそれますが、微弱陣痛でお産がなかなか進まないという時に、院内を歩いたり階段の上り下りをしてもらったりしています。これも効果はあるのでしょうか。
山村
陣痛中のウォーキングもまた論点が違うと思うんです。イギリスの研究では、陣痛中にウォーキングをさせてもその後の子宮の開きや分娩時間には有意差がなかったという結果が出ています。ただもちろん効果的な歩き方と効果的ではない歩き方があると思うので、どのような歩き方ができるかによっても結果は違うと思います。私はどちらかといえば、股関節を動かすという点に焦点をあてて、階段の上り下りの方が効果はあるのかなと思います。トイレに行くことが大事なのと一緒で、立ち上がったり座ったりするような股関節の動きが大事です。
じょさんしnavi柏村
わかりました。
話は戻りますが、予定日を過ぎた妊婦さんに対するウォーキングの進め方は、適度に歩くということですね。
山村
そうですね、1日に1時間以上、1週間で7時間以上ウォーキングを行っていた場合、児がNICUに入る確率が4倍になることが発表されています。歩きすぎは母児にとってリスクがあるということです。
「とにかく頑張って歩いて」ではなく、「2.30分を午前と午後に分けて行ったり、一度で歩く時にも途中で休憩を挟むこと。」時間ではなく姿勢や、呼吸や、その時間を楽しんだりすることに意識を向けるようにしていただけるといいと思います。
じょさんしnavi柏村
たくさん歩くこと、ではなく歩き方が大事なことがわかりました。トレーナーさんの視点ではどのような歩き方のポイントが重要だと思いますか。
山村
量より質が大事ということです。特に妊婦さんは非妊時では考えられないくらい上半身がのけぞった、後ろに反ったような状態になります。このまま歩くとペタペタ歩きみたいな歩き方になり、転びやすくなるし、その動き自体も身体にとって適切ではありません。そのせいで腰痛や恥骨痛などのトラブルもおこりやすくなります。
また、歩いていてそういった痛みが増すなら、歩かないという決断も大事です。痛みが出ない歩き方をするか、歩く以外の選択肢を探してほしいです。
じょさんしnavi柏村
良くない姿勢のまま歩くことで、マイナートラブルを悪化させてしまうんですね。それでは具体的に適切な姿勢はどのようなポイントがありますか。
山村
私は「上半身が骨盤に置いていかれないような意識とペースを意識して歩きましょう」と伝えています。上半身が骨盤に置いていかれない、お腹の赤ちゃんも抱っこして一緒に連れて行くように「赤ちゃんを抱っこするような姿勢での歩行」が理想です。はやく歩いても平気な方はシャキシャキ歩いて大丈夫ですが、速く歩くことよりも姿勢の方が大切です。
妊婦さんへの運動に対して、きっと多くの助産師の常識が覆されるような情報ですよね。陣痛をおこすため、またはお産を進める目的の指導で、マイナートラブルを悪化させてしまっては本末転倒です。恥骨痛や腰部痛があることで、陣痛中の体動が制限されてしまったり、産後の行動拡大も進まないということは、避けなければいけません。ウォーキングは歩数ではなく姿勢が大事、量より質という点をポイントにぜひ保健指導や陣痛中のママへ説明をしていきたいです。
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