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妊娠期
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2024

【助産師の基礎知識】妊娠中の便秘はなんで?対策と下剤まとめ|保健指導で明日から使える

  • 保健指導
  • マイナートラブル
  • 排便コントロール
SUMMARY
この記事でわかること
妊娠中の便秘は全妊婦さんのうち約40%に認められるといわれています。妊娠中の便秘は、安易に薬剤だけを頼るだけではなく、予防・対策するための生活習慣の改善について指導する必要があります。妊娠中の便秘は腹痛や痔核の原因になるだけでなく、最悪の場合子宮収縮を誘引する場合もありますよね。この記事では、妊娠中の便秘の原因と対策、使用できる薬剤の種類について詳しく説明します。

 もともと女性は男性と比べ、便秘になりやすい傾向にあります。これまで便秘がなかった女性でも、妊娠を機に便秘となる場合も多いです。妊娠の便秘は、生活の見直しだけで改善する場合もありますが、医師に相談し薬剤を使用が必要となるケースも多いです。助産師として、まずは生活改善のための保健指導を実施し、医師と情報共有をしながらできるだけ自然な排便コントロールができるよう介入していく必要があります。

妊娠中の便秘の原因

1.ホルモンバランスの変化

妊娠すると、体内のプロゲステロン分泌が亢進します。プロゲステロンは子宮の収縮を抑制する作用があり、その影響で腸周辺の筋肉の運動機能まで低下させ、消化活動が遅くなることで引き起こされることが多いです。

2.子宮の増大

大きくなった子宮により腸管が圧迫され、便がスムーズに進まなくなり便秘の原因となります(直腸性便秘)。胎児が大きくなればなるほど圧迫が大きくなるため、妊娠週数が進むにつれて便秘が悪化するケースが多いです。


3.つわりによる食生活の変化

妊娠初期は、つわりにより食事摂取できなかったり、食事の嗜好が変化したりすることが多いです。その結果、排便をスムーズにしてくれる食物繊維や水分が不足しやすく、便秘を引き起こしやすいです。

4.疲労やストレス

腸管は自律神経と深く関係しているため、ストレスを感じると腸の動きが鈍くなってしまいます。個人差もありますが妊娠中は、体調や生活の変化で疲れやすく、ストレスも感じやすくなります。そのため、身体の各機能を調整している自律神経が乱れ、腸管の動きに悪影響を及ぼす原因になります。

5.運動不足

適度な運動は、腸管の動きを活性化させる作用があるため、運動量が減ることでも便秘を誘発させます。妊娠初期や後期には、運動量が減る妊婦さんが多く、便秘を助長させるリスクとなります。

便秘の予防と対策

1.水分摂取

 妊娠すると水分の排出が鈍くなるため、積極的に摂取する必要があります。特に起床時のコップ1杯飲水することにより、睡眠中に消費した水分不足が解消できるだけでなく、胃腸が刺激されて動きが活発になり、排便が促される作用もあります。1.5〜2L以上の摂取を目標に伝えます。

2.食物繊維の摂取

食物繊維は排便を促す作用があるため、積極的な摂取が大切です。食物繊維の中には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があります。それぞれ役割が違うため、バランスよく2種類とも摂取することが望ましいです。

役割

主な食材

水溶性食物繊維

胃や腸管から吸収されないため、硬くなった便を柔らかくし、腸内環境を整える作用がある

海藻類、納豆、にんじん、おくら、アボカド、キウイ、プルーンなど

不溶性食物繊維

腸管内で水分を取り込むことで数十倍に膨らみ、腸壁を刺激して腸の動きを活発にする

インゲン豆・えんどう豆・大豆・おから等の豆類、とうもろこし・大麦などの穀類、こんにゃく、切り干し大根など

3.適度な運動

運動制限がない妊婦の場合は、無理のない範囲でウォーキングや散歩、ストレッチなどを勧めます。マタニティエアロビクス・スイミング・ヨガなど妊婦に特化したプログラムなども安心です。週に2〜3回程度身体を動かす習慣付けによって効果が期待できます。

4.乳酸菌の摂取

乳酸菌には腸管の動きを整える作用があります。ヨーグルトやチーズなどの乳製品、納豆、味噌、漬物、キムチなどの発酵食品に多く含まれるため、食べやすいものの摂取を勧める。


5.睡眠を摂る、ストレスを溜めない

排便は副交感神経が優位の時に行われるため、ストレスで交感神経優位になっている場合は便秘を誘引・悪化させます。またストレスにより腸内細菌のバランスも崩れやすく、腸管内の悪玉菌が多くなることで便秘の原因につながります。また睡眠不足は、自律神経の乱れにつながります。そのため良質で適度な睡眠の確保により、便秘を改善する効果が期待できます。

妊娠中に使用できる薬剤

1.浸透圧性下剤

下剤自体は腸管に吸収されない薬剤のため、腸管内の浸透圧が上昇し、水分と電解質が腸管内に移行することで便を軟化させる作用がある。習慣性がなく、長期的に服用できる。他の下剤と併用可能。 

例)酸化マグネシウムやモビコールなど 

2.大腸刺激性下剤

腸を刺激して腸の動きを活発にし、排便を促す。効果は強いが習慣性があるため、長期連用で効果が出にくくなり、服用量が多くなる可能性がある。下腹部痛の出現する頻度も高め。習慣性や連用性により、長期間大量に服用し続けないよう注意が必要。

例)センノシド、ラキソベロン液など

3.整腸剤

腸内細菌のバランスを整える作用がある。整腸剤の種類によって配合されている菌の種類は様々だが、主にビフィズス菌、乳酸菌、納豆菌、酪酸菌、糖化菌など人間の腸に由来する菌が含まれている。それぞれ悪玉菌が生息しにくい環境にする、排便を促す腸管の運動を促進するなど様々な働きがある一方、短期的かつ直接的に便秘を改善する効果は期待できない。

4.坐薬と浣腸

坐薬は炭酸水素ナトリウムを含み、直腸内で炭酸ガスを発生させ、その刺激で便通をつける作用がある。浣腸は薬液が直腸を刺激し、水分を増やして便を柔らかくする作用がある。どちらも即効性があり、坐薬の方が浣腸よりも作用として穏やか。

例)グリセリン浣腸、新レシカルボン坐剤など

特徴

効果が出るまで

     注意点

酸化マグネシウム

第一選択になることが多い

8〜10時間

多量内服による高マグネシウム血症に注意

モビコール

水に溶かして服用

欧米では便秘の第一選択!

2日間

2歳以上から使用できて副作用がない

センノシド

服用量が多いと腹痛を起こしやすい

8〜10時間

習慣性や耐性がつきやすい

子宮収縮作用がある

ラキソベロン液

大腸のみに作用

7〜12時間

習慣性や耐性がつきやすく、頓用か短期間で使用

整腸剤

軟便や便秘、腹部膨満に効果的

腸内環境によって時間はかかる

新レシカルボン坐剤

ガスが間接的にすげきするため耐性がつきにくい

10〜30分間

血圧低下に注意

グリセリン浣腸

即効性があるため早く便を出したい時や直腸に溜まっている硬い便に効果的

3〜10分間

直腸穿孔やショックに注意


妊娠中の便秘への対処法は、食生活の見直し、適度な運動、十分な水分摂取など、日常生活の小さな変更が大きな違いを生むことが分かりました。妊婦さんが抱える問題を緩和するために、知識を活かし、適切なアドバイスとサポートを提供し続けることが私たち助産師の役割です。共に学び、成長し続けることで、より良いケアを実現しましょう。今日紹介した対策を実践し、妊婦さん一人ひとりの状況に合わせたケアを心がけましょう。 

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