#
産褥期(育児)
1
/
20
2025

【助産学生・新人助産師必見】帝王切開術後の看護のポイントと観察項目

  • 手術侵襲
  • ポイントまとめ
  • 手術後観察
SUMMARY
この記事でわかること
術後の母体は、麻酔や手術の影響からの回復が必要であり、その間、助産師は患者の生命を守るために慎重な観察と適切なケアを行うことが求められます。 特に、産科では出血リスクが高く、異常の早期発見は母体の安全を確保するために必要不可欠です。 術後はポイントを押さえた観察とケアによって術後合併症を起こさず、母体の早期回復を促進することが目標となります。 しかし産科では、術後の状態から回復したら終わりではありません。 その後は母乳育児のスタートが待っています。術後の母乳育児が円滑に進められるようにするためにも、術後早期の観察やケアは重要になります。 この記事では、帝王切開の術後における具体的な観察項目とポイントをまとめています。帝王切開術後の観察視点の理解を深めたり、再確認し、適切なケアを提供できる助産師を目指しましょう。

帝王切開術は母体と胎児の安全を確保するために行われる手術ですが、術後の母体には子宮復古など産婦特有の課題も生じます

他の手術に比べ出血も多いため、ショックなどには十分注意して観察しなければなりません。
そして、帝王切開術から体調が回復したあとは、授乳育児という仕事がすぐに待っています。
術後合併症を予防し、回復をスムーズに進め、その後の授乳育児へのスタートが順調に切れるようにするためにも、術後からの助産師の適切な観察とケアが重要になります。

ここでは、帝王切開術後の看護に必要な知識や観察のポイントを押さえましょう。




1.帝王切開術後の看護の目的

〇母体の生命の安全確保
術後のバイタルサインの観察や出血量の確認を行い、母体の命を守る。

〇創部の回復促進と感染予防
創部感染や合併症を防ぐために、術後の創部管理を行う。

〇早期離床と機能回復の促進
早期離床を促すことで血栓症・褥瘡予防や腸管機能の回復を図る。

〇母児の愛着形成の支援
術後早期より母乳育児の開始や母子同室をサポートし、母児関係を深める。


2.術後の観察項目

1)全身状態の観察

〇バイタルサイン(体温、血圧、脈拍、呼吸、SpO2)
術後は、手術侵襲による循環動態の変化、出血や感染によるショックの兆候がないかを把握するために、帰室時より頻回な測定が必要です。
帰室後1~2時間は15~30分の観察を行い、安定してきたら徐々に1時間毎、2時間毎と間隔をあけながら評価をしていきます。
術中は低体温になりやすいため、電気毛布を準備し、シバリングを起こしていないか観察します。
脈拍の増加や血圧の低下は、術後出血の初期兆候の可能性があります。

意識レベルやSI(ショックインデックス)で評価しましょう。

妊娠中に切迫早産でニフェジピンを使用していた場合は、高血圧がマスクされるため、術後高血圧を発症することもあります。
また、麻酔の影響や疼痛による呼吸抑制も起こりやすいです。
早期発見するために、呼吸数や深さ、チアノーゼの有無、酸素飽和度(SpO2<95%)の低下がないか観察します。


ポイント!

術前のバイタルサインと著変はないか観察しましょう。
手術侵襲における循環動態の変化の理解が大切です。
疼痛の出現や出血によってバイタルサインも変化します。
SIを用いて評価し、全身状態の観察・把握を行い異常の早期発見ができるようにしましょう。

2)IN-OUTバランス

〇尿量の評価
術後の循環不全を予防するために、尿量の観察は必須です。
術後に必要な尿量は0.5~1.0ml/㎏/hとされ、尿量が少ない場合は、腎機能低下や循環血液量の不足が考えられます。
尿量は手術侵襲による循環血液量減少の指標として最初に反映されるので、重要な観察項目です。
尿道カテーテルの閉塞がないかも観察します。

〇ドレーン排液の量と性状
ドレーンから排出される液体の量や色は、術後の体内出血や滲出液の増加を確認する指標となります。排液が鮮血色で多量の場合、内出血の可能性を疑い、速やかな対応が必要です。

〇出血量(パッドやシーツへの出血の有無)
術中出血量や悪露の量を確認します。

〇補液量
術前より補液がどれだけ入っているか確認します。


ポイント!

尿量は必要量得られているか、OUT量に対してIN量は足りているかなどINOUTバランスの計算は必須です。
出血量が多い時、尿量が少ない時は指示の補液を追加したり利尿剤を考慮し、バイタルサインに変化はないか合わせて観察、アセスメントを行い、循環不全が起こらないように努めます


3)子宮復古状況

〇子宮底、硬度の観察
創部があるため子宮底、硬度の観察は痛みに配慮しながら、優しく触れ観察します。
経腟分娩に比べて腹部に創があり、痛みもあるのでわかりにくいこともありますが、収縮不良は出血量の増加につながるため注意して観察します。
双胎妊娠など子宮の過伸展、切迫早産でのリトドリンの使用、妊娠高血圧症候群によりマグセントを使用している妊婦は弛緩出血のリスクがあるため、特に注意します。
帝王切開では、経腟分娩に比べ子宮復古が遅れやすく、術後の子宮底は臍上~臍下1横指のことが多いです。

〇出血量
出血が30~50g/h以上の場合は、子宮収縮不良を疑います
上記で述べたように収縮不良の原因となる状況がある場合には、特に注意して観察します。
帝王切開では頸管が十分に開大していなかったり、安静臥床によって悪露が停滞しやすいため、体位交換時や座位・立位時に一気に悪露が排泄されることもあります。

ポイント!

出血が多い場合は、リーダーや医師へ速やかに報告し、出血の原因検索を行いながら、補液や収縮剤投与を行っていきます。
出血性ショックとならないよう、意識レベルや大量出血の兆候(頻脈、低血圧)も見逃さないようにしましょう。
輸血が必要になる場合もあるので、輸血管理も行えるようにしときましょう。



4)創部と周囲の状態

〇創部の状態
創部の炎症や感染兆候を早期に発見するために、創部周囲の変化を定期的に確認します。
発赤や腫脹、熱感、疼痛、出血などないかを観察します。
創部感染は術後2〜3日目から起こり創部の発赤などをはじめ、発熱、倦怠感などの症状と血液検査での炎症所見(WBC、CRPなど)がみられます
創部が離解していることもあります。
感染を起こした場合は、早期に抗生剤治療が必要となります。

〇ドレッシング材の状態
ドレッシング材の汚染や滲出液、出血が多い場合、またドレッシング材が剥がれている場合は、感染リスクが高まるため医師へも報告し、ドレッシング剤を張り直したりガーゼを当てるなどして適切にケアし、清潔に管理します。
出血が多い場合はマーキングを行い、拡大がないかチェックしましょう。

ポイント!

感染予防のために、手指衛生を徹底し、創部のケアと保護を行い、清潔に保ちます
術後から日々の創部の観察を丁寧に行い、疼痛の状況や感染徴候の有無に注意を払いましょう。


5)消化管の回復

〇腸蠕動音の確認
腸蠕動音が聞こえるか弱くないか、腹部膨満、排ガス、腹痛、嘔気・嘔吐の有無を確認します。
術後の生理的腸管麻痺は1~2日程で改善します
2日目以降も腸蠕動音が弱い、聞こえない、排ガスがない場合は、麻酔や術後の腸管機能低下が疑われます。
術後イレウスを予防するケアが重要です。


ポイント!

腸音の減弱、消失や腹部膨満など腸管機能低下を起こしている症状を見逃さず、ガス排出を促すため早期離床に努めましょう。


6)疼痛の管理

〇痛みの強さや部位

患者の痛みの程度は疼痛スケールを用いて、どこがどれくらい痛いかを判断できるようにします。
創部の疼痛か、後陣痛の疼痛によるものか、術後すぐの間は区別がつきにくいですが、離床が進んでいくと区別がつくようになる方もいます。
硬膜外麻酔を使用している場合は、まれに硬膜穿刺後頭痛を起こすことがあります。
離床が進み、座位になると頭痛がひどくなる場合は、硬膜穿刺後頭痛が疑われます。
主な治療は安静臥床と補液負荷で、1週間ほどで改善することが多いです。
硬膜外血液パッチ(ブラッドパッチ)という処置で対応することもあります。

〇疼痛管理薬の効果の評価
投与された鎮痛薬が効果的かどうかを確認します。
創部や後陣痛による疼痛は、術後の回復を妨げる要因となります。
適切な疼痛管理を行い、早期離床することで血栓症や褥瘡予防に繋がります。

ポイント!

疼痛スケールを用いて痛みの判断を行い、適切な疼痛コントロールの上でケアを行いましょう。


7)母乳育児支援

◯愛着形成への支援
術後は安静臥床が続き、自身のセルフケアが行えるようになるのは術後2~3日目からとなります。
すぐに児のお世話が出来なくても、本人の体調に配慮し、希望に添いながら児との面会時間を持てるようにします。
児が入院となり面会が困難な場合は、写真の提供などができるといいでしょう。

〇母乳育児支援
本人の母乳育児への思いや創部痛に配慮しながら、術後早期の授乳を促進します。
術後早期の肌と肌のふれあいは、母乳分泌を促進し、母児の絆を深めます
授乳が難しい場合は、本人や助産師による乳頭刺激を行い、母乳分泌を促進するケアを行います。
授乳時は、背もたれや授乳クッションを使用して、術部に負担をかけない横抱きやフットボール抱きの指導を行います。


ポイント!

母体の状態に配慮しながら、早期から母児のふれあいができるよう支援しましょう。
創部痛などの負担を軽減できるポジショニングを取り、授乳指導を行いましょう。







3.まとめ

帝王切開術後の看護のポイントは、まずは術後における母体の全身状態の観察と術後の循環動態を踏まえた的確なアセスメントです。

その判断があって、子宮復古促進、術後合併症の予防、早期回復できるためのケアが行えるようになります。術後の観察項目やケアを行う理由・目的を理解しながら、患者一人ひとりのニーズに応じた看護を提供することが大切です。

術後も母親が前向きに育児をスタートさせることができるように、助産師として術後早期より母親の不安を軽減し、母乳育児や育児へのサポートを行えていけるといいですね。


関連の記事も読んでみる
2025.01.20
#
産褥期(育児)

【助産学生・新人助産師必見】帝王切開術後の看護のポイントと観察項目

  • 手術侵襲
  • ポイントまとめ
  • 手術後観察
2025.01.06
#
分娩期

【助産師の基礎知識】産科でよく見る補液の種類|目的に応じた補液の選択

  • 輸液の種類
  • 基礎知識
  • 点滴管理
2024.12.16
#
分娩期

【2024年最新】産科DICの新基準を徹底解説|助産師の基礎知識

  • 産科DIC
  • 血液凝固系の異常
  • 母体救急
2024.10.31
#
分娩期

母体死亡率9割?!羊水塞栓症の病態生理と徴候|助産師に求められる知識と対応

  • 産科的合併症
  • 迅速な対応
  • DIC
2024.10.23
#
分娩期

【産科の基礎知識】分娩誘発剤・促進剤を徹底解説!種類と看護のポイント

  • 点滴
  • 薬剤
  • 看護
2024.10.15
#
産褥期(育児)

【新人助産師必見】母乳育児のトラブル対処法まとめ それぞれの原因と看護を学ぶ

  • 乳腺炎
  • うっ滞性乳腺炎
  • 乳頭トラブル
関連の記事をもっと読む