【助産師の新常識】帝王切開にもバースレビューが必須なワケ
- 帝王切開
- バースレビューの目的
- 印象に残ったママの話
- 夫婦で学ぶこと
ゲストの紹介
今回は、帝王切開についての発信をしている細田恭子先生と対談させていただきました。細田さんはご自身が2回の流産と3回の帝王切開を経験されています。その時にご自身にとって想定外の出来事であったことや発信者が少ないことから、「発信できる人がしていくべきだ」と決意されました。
「帝王切開で出産したお母さんに贈る30のエール」は、帝王切開で出産したお母さんたちが心の中に抱く「もやもや」を解消し、子育てに前向きになるためのメッセージ集です。辛さや悲しさに共感するだけでなく、無事に我が子を抱っこするという一番大切なことに気づかせてくれる一冊です。
帝王切開におけるバースレビューの意義
じょさんしnavi 柏村
「モヤモヤを消す」という点では、助産師の行うバースレビューとも繋がってきます。この本はぜひ助産師にも読んでほしいと思っているのですが、細田さんは助産師の行うバースレビューの価値、特に帝王切開のバースレビューについてどう思われますか。
細田
本当に大切だと思います。病院を退院してしまうと、頼る人が少なくなってしまいますよね。入院期間はお母さん達にとって身体を整えて赤ちゃんに向き合う姿勢を作っていく時期だと思いますが、身体だけでなく心も整えてほしい。手術を受けたという事実を受け止めてもらい、経膣分娩と同じように「おめでとう、頑張ったね」と自分からももちろん他の人からも認めてほしい。助産師さんとのバースレビューを通して、一つの受け止める過程にしてほしいです。
じょさんしnavi 柏村
助産師にとっては、お母さん達から「産んだ実感がない」などマイナスな言葉が出てきた場合や、言葉数が少ない時に「話さなきゃ」「バースレビューだから気持ちを引き出さなきゃ」という思いを抱いてしまいやすいです。お母さんの目線から細田さんが、助産師の関わり方とかバースレビューにおいて助産師に求めるものはありますか。
細田
バースレビューの一番の目的は、「自分が一人じゃない」と思えることだと思います。言葉って怖いので、相手を傷つけようと思っていなくても、受け取る側によっては意図せず正反対に感じてしまうこともありますよね。そして傷つけてしまったと思って接すると、相手にもそのぎこちなさは伝わるんです。だから無理に励まそうと言葉をつながなくても、「そうなんだね」って受け止めてもらうだけでいいし、何も言わず肩をさするだけでもいいと思います。
また緊急帝王切開の場合は、お母さん自身が帝王切開の理由を十分に理解できていない時もありますよね。もし正しく理解できないまま退院となってしまったら、自分の出産を語ることができず悲しさや虚しさにつながってしまうと思います。今回のお産について正しく知る機会になることも、バースレビューの役割の一つだと思います。
さらにバースレビューは、実施する時期によっても違う効果があります。産後の入院中は、お母さん自身の身体のことや傷の痛み、赤ちゃんのことで精一杯の状況です。「嬉しかったです、よかったです」と肯定的に受け止められている人だけではなく、「こんなつもりじゃなかったのに」と受け止めに時間がかかっている方もいますよね。しかし時間の経過や育児をしていく過程で、気持ちが落ち着く人もいます。一方で、時間の経過とともに深く考え込んでしまう方には「前回はこうおっしゃっていたけど今はどうですか」と、心境の変化をお母さん自身に気づいてもらうために、時期を分けて複数回会話をする機会が作れるとベストです。そうすることで「思いつめてそれしか考えられていなかったけど、色々なことがあった1ヶ月だったな」と、時間についても考えるきっかけになると思います。
バースレビューの注意点
じょさんしnavi 柏村
帝王切開を担当していない助産師がバースレビューを行う時の注意点はありますか。
細田
話を聞くことは、相手が誰かではなく、お母さんが話すということが大事なんです。手術室にいたかどうかよりも、産後に自分のところにきて、話をさせてくれて、一人じゃないことを実感できる。お母さん達が、気持ちを言葉に表すという時間を大切にしてほしいと思います。もちろん経過を見ていた人の方が、「お腹から赤ちゃんが出てきた時にどんな様子だったよ、と話をしてくれることもあるので、嬉しいです。ですが助産師さんからどんな話をされるか、というよりもお母さんにとって話す時間をもらえた、ということを大事にしていただけたらと思います。
じょさんしnavi 柏村
助産師だからこそ、医学的になんで帝王切開になったのかとかを話してしまいがちになっていました。ですが根本的なバースレビューの目的として「一人じゃない」と感じてもらう。そのように考えれば、私も「何か話さなきゃいけない」と思わずに、一緒にいるだけだけどお母さんに少しほっとしてもらえる、そういう役割もあるんだなと勉強になりました。
細田
お母さんにポジティブに思って貰わなくてはいけない、と考えてしまうとどうしても「がんばれ」って言葉になってしまいますよね。でもお腹を切る手術を受けた後で、ポジティブになれる人は少ないし、ちょっとマイナスの方向にいってしまいがちです。ですがそれも含めて、辛いことや苦しいことも含めてお産だよってことを受け入れてほしいですよね。
帝王切開についての認識を変える必要がある
お母さんにとって、一番身近な人であり一番理解してほしい相手は夫です。お母さん自身も帝王切開についてよくわかっていないことは多いですが、それ以上に男性は帝王切開について理解されていません。そうすると、「楽でよかったね」とか「俺の休みが取りやすくてラッキーだった」とか、軽い気持ちで言われてしまった言葉により傷ついているお母さんもいます。そこは男性にも勉強していただきたいです。
また傷についても同じで、昨日まで綺麗だったお腹に10cmの傷があった時に、「えっ」という顔をしてしまうパパもがいます。女性は特に、旦那さんからのその様な反応には敏感なので、寂しさや悲しい気持ちになりますよね。4人に1人は帝王切開の時代なので、これからは夫婦で帝王切開について学んでもらいたいです。そこで起きたことを30年でも40年でも女性は覚えているので、夫婦の未来のためにも今を大切にするために勉強していただけたらなと思います。
帝王切開のバースレビューをしている施設は、どのくらいあるでしょうか。バースレビューの目的は、出産体験を振り返り「お産」について意味を見出してもらうことです。バースレビューの有無を出産方法によって差別化するのではなく、助産師はどちらも一家族のお産であることを再認識する必要があります。全てのお産を経験したお母さんが自分自身のお産を肯定的に受け止められるように、助産師は寄り添っていきたいですね。
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