
【助産師必見】胎児疾患のある妊婦と家族を支える|NPO法人 親子の未来を支える会
- 胎児疾患
- 胎児異常
- 先天異常
胎児疾患
胎児疾患とは、出生前に診断される病気や先天的な異常を指します。代表的なものには、先天性心疾患、中枢神経系の奇形、染色体異常、消化管閉鎖、腎・泌尿器系の疾患などがあります。これらの疾患は、エコーや、胎児MRI、羊水検査などで明らかになることが多く、早期に診断されることで出生後の治療や対応方針を立てることが可能となる一方で、妊婦や家族にとっては大きな精神的負担となります。
胎児に疾患があるとわかった際、多くの妊婦と家族は驚きや悲しみ、混乱、そして将来への不安に苛まれます。「この子を産んでもいいのか」「育てられるのか」「治療法はあるのか」など、さまざまな思いや疑問が渦巻き、短期間で重大な決断を迫られることもあります。このような心理的・社会的負担に対し、医療者による支援だけでなく、同じ経験を持つ人とのつながりや、信頼できる支援団体の存在が大きな力となるのです。
また、胎児疾患が診断された場合、出生後に高度な医療介入が必要になることも多いです。疾患や病態の重症度にもよりますが、NICUでの長期入院や、継続的な治療・フォローアップが想定されます。妊娠期から将来を見据えた準備が必要となるため、家族の情報整理と心の準備を支える支援体制が求められています。

「親子の未来を支える会」とは
「親子の未来を支える会」は、胎児期に疾患が見つかった赤ちゃんとその家族を支援することを目的に活動しているNPO法人です。医療者、当事者家族だけではなく、エンジニアや管理栄養士、弁護士など様々な職種が携わっています。設立の背景には、当事者である家族の「同じような経験をした人とつながりたい」「医療者ともっと話し合いたい」といった切実な声がありました。ー1歳(うまれる前)から命と向き合い、命を迎える家族の自律的な意思決定支援を行うために活動されています。
1.胎児ホットライン
- 医療情報の提供と説明支援、ブックレット作成
- 同じ経験を持つ家族同士のピアサポート活動「ゆりかご」
- オンライン相談窓口の設置や、地域別の情報マップ作成など情報格差を減らすための取り組み
- 妊婦と家族への心理的支援(専門家によるカウンセリング)
- 出生前からNICU入院中、退院後にかけての切れ目ない支援
2.ライフサポート
- 就学支援やライフプランニングのためのサポート
- 22q11.2欠失症候群の情報提供や就学支援
- 家族会立ち上げ支援
3.胎児医療
- 胎児診断(出生前診断)のための情報提供
- 胎児治療のための情報提供や渡航支援
4.学校看護師の育成
- 学校での医療的支援を支えるメンバーの募集や育成
- 講習会や技術支援、マニュアル作成支援
- 行政や保育園での就園支援
- 医療的ケア児童の自律支援
たとえば、胎児に心疾患があると診断された妊婦が、家族と共に法人を通じて他の当事者家族とつながり、不安の軽減や情報整理を行いながら出産に向けて前向きな気持ちを取り戻したケースもあります。また、退院後の育児に不安を抱える家族に対し、地域の訪問看護や支援制度を紹介するなど、医療機関外での支援も提供しています。
さらに、同法人では家族向けのブックレット配布や、出生後に必要な物品や支援サービスの紹介、時には弁護士や行政書士との連携による社会的支援も行っています。このように、「親子の未来を支える会」は、医療の枠を超えた包括的な支援を実現しており、妊婦と家族にとって大きな安心材料となっています。

3.助産師ができる支援
胎児疾患が判明した妊婦とその家族に対して、助産師はさまざまな形で支援を行うことができます。
まず大切なのは、妊婦や家族の話に耳を傾けることです。診断直後の妊婦や家族はショックや混乱が大きい状況です。すぐに情報提供や説明に入るのではなく、「どんな気持ちでいるのか」「何に戸惑っているのか」を丁寧に聴き取ることが重要です。非判断的に、相手の感情を受け止めることで、妊婦は安心して話をしながら情報や気持ちを整理し、自ら考える余地を持てるように支援する必要があります。
次に、支援資源の一つとしてのNPO法人の存在を知ってもらうことです。「親子の未来を支える会」は、当事者にしかわからない不安や孤独に寄り添い、実践的なサポートを行っています。助産師や産院だけではカバーしきれない情報や支援体制については、他職種や団体と連携して関わることが重要です。助産師が知識を持っていることで、必要に応じてママや家族へ紹介することができれば、妊婦や家族の支援の幅は大きく広がります。
また、出産に向けたケアでは多職種連携が不可欠です。医師、看護師、ソーシャルワーカー、臨床心理士、保健師などと連携し、妊婦や家族の希望を尊重した支援計画を立てていくことが求められます。助産師は妊娠中から産後まで継続的に関わることで、妊婦の気持ちの変化を見守り、必要な支援につなげる「橋渡し役」として重要な役割を担います。
さらに、助産師自身が胎児疾患についての知識を深めておくことも重要です。疾患ごとの経過や治療、出生後の生活の見通しなどについて、ある程度の情報を持っていることで、妊婦や家族の質問に対して適切な案内や支援が可能になります。研修会や講演会などを通じて学び続ける姿勢が求められます。
胎児に疾患があるという事実は、妊婦や家族にとって決して簡単に受け止められるものではありません。その苦しさを和らげる唯一の方法は、「一人ではない」と感じられるようなつながりの存在です。助産師や医療者、支援団体など、さまざまな支えがある中で、妊婦自身が「自分らしい選択」を納得した上で決定できることが何よりも大切です。
また支援者である助産師自身も、抱え込みすぎないことが重要です。職場や地域、社会資源である支援団体などと連携しながら、自分の役割を認識し、必要に応じて他職種や支援団体につなぐことが、妊婦と家族にとってより良い支援につながります。助産師の「支える」ということは、妊婦と家族が前に進めるようそっと背中を押すことかもしれません。さらに、支援とは「正しい答え」を与えることではなく、「一緒に考える姿勢」でもあります。妊婦と家族がどのような選択をしたとしても、それを尊重し、見守り続ける存在であることが、支援者としての信頼を築く基盤となります。

胎児疾患の診断は、妊婦や家族の人生に深く関わる大きな出来事です。そのときに、適切な情報と支援につながることで、不安を和らげ、自分らしく前を向くことが可能となるかもしれません。NPO法人「親子の未来を支える会」は、そうした家族に寄り添い、未来を支える大切な存在です。
助産師として、この団体の存在を知り、必要なときに紹介できることは、大きな支援の一歩になります。妊婦と家族の思いを尊重し、支援の輪を広げていくために、私たち助産師にできることを今一度考えてみましょう。

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