助産師に聞いた!人工妊娠中絶の本音
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- 人工妊娠中絶
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現場と問題
日本の人工妊娠中絶の件数は、厚生労働省によると令和3年度には126,174件。実は前年度に比べ15,259件(10.8%)も減少していて、年々減少傾向となっています。しかし、1日に約350件前後の人工妊娠中絶が行われていると考えると、すごく多く感じますよね。
日本産婦人科医会の調査では、人工妊娠中絶の理由は「収入が少なく育てられない」「若すぎる」「未婚」など経済的な理由でが大半を占めています。他にも、日本では胎児の病気を理由とした中絶は認められていないため、出生前診断の結果をもとに中絶を行う場合も、経済的な理由として行うことが多いです。
避妊方法や性教育についての課題
人工妊娠中絶を選択する理由に経済的理由が多いと述べましたが、若年層の妊娠も大きな課題です。しかし、これは妊娠する若者が悪いのではなく、教育者や正しい性教育が普及していない社会の問題なのです。
高等学校までの教育課程は、いわゆる「歯止め規定」により、学校では妊娠までの経過や避妊、中絶について扱うことができません。さらに日本では、性教育を勧めようとすると、「性に積極的になる」とタブー視する風潮もあります。このような不十分な性教育で、若者が妊娠すると「まさか避妊方法を知らないのか」という世間の声が生じますよね。妊娠した若者を責めるのではなく、不十分な性教育やSNSの影響で、誤った情報が氾濫していることを理解しなければいけません。そして、正しい性教育・避妊方法を普及する必要があります。
出生前診断のよる人工妊娠中絶の選択について
出生前診断の結果、胎児の疾患などを理由に人工妊娠中絶を行うことは禁止されています。そもそも出生前診断の目的は、妊娠中に胎児の状態や疾患の有無を調べ、生まれてくる赤ちゃんの状態に合わせた最適な分娩方法や療育環境を検討するための検査です。しかし実際には、胎児異常があった場合にその子を産み育てるかどうかを決める目的で検査を受ける人が多いという現場があります。この点も倫理的に大きな問題となっています。
NIPTコンソーシアムという出生前診断の専門家によると、2013年4月から2018年までの間で胎児異常によって中絶を選択した人の割合が発表されています。21トリソミーで87.6%、18トリソミーで59.8%、13トリソミーで68.1%という結果です。診断中に胎児死亡となる場合もありますが、半分以上の人が胎児異常を指摘されて中絶を希望しています。出生前診断で陽性が出た場合、確定検査を受けて結果が出る頃には、早くても妊娠15〜18週頃です。数週間、中には数日という限られた時間の中で、人工妊娠中絶が可能な21週6日までに妊娠継続するかどうかを考えなければいけないということです。考える時間も少ない上に、中期中絶の方法での人工妊娠中絶になるため、身体的にも精神的にも大きな負担があります。
また今日では、出生前診断の検査可能施設が増えている反面、陽性だった場合のフォローを一切行っていないような施設もあります。出生前診断を行う際には、必ず本人が検査について正しい知識をもち、納得した上で行う必要があります。そのため、認証施設で検査の前後に必ず遺伝カウンセリングを受けることが望ましいです。
助産師に聞いた!賛成・反対それぞれの意見
私のInstagramフォロワーの助産師さんへアンケートを取った結果、130人の方から回答があり、驚くことに8割弱の助産師が賛成でした。これは私もかなりの予想外の結果です。
賛成派の意見を紹介します。ただし賛成意見とはいっても、ほとんどの助産師が積極的に賛成している訳ではありません。一番多かったのは、生まれた子が辛い思いをしてしまったり、虐待などの悲しい事件になるくらいであれば、中絶という選択肢が必要との意見です。望まない妊娠をした女性にとっては、最後の逃げ道ですからね。また女性には産むか産まないかを決める権利があるという声も多数ありました。「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」において「私のからだは私のもの」「産む・産まないは女性の自己決定」と提唱されている概念に則った意見です。一番近くで育児をする女性達をみているからこそ、産み育てるにはある程度の覚悟やマンパワーが必要だという現実的な問題ですね。その他には、今後の課題として望まない妊娠を防ぐための性教育の普及と、性犯罪を0にすることが必要だという意見も多くありました。
一方、反対派の意見を紹介します。人工妊娠中絶の処置前に行うエコーで、胎児が動いてところを見ると切なくなるため反対したいという声や、個人的な理由で中絶を選択する人が増えているため、そこだけみると一概に賛成とは言えないという意見が多かったです。「妊娠しても中絶すればいい」などと命を軽視しているような人がいるのも事実で、そのような方をみると助産師も女性の一人として複雑な気持ちになります。また、中絶の処置の方法についても意見がありました。掻爬は反対だけど、経口中絶薬は賛成という意見もみられました。やはり人工妊娠中絶の処置は、時期にもよりますが痛みや次回の妊娠に影響があるなど、心身への影響が大きいですよね。助産師は賛成派反対派に関係なく、女性につらい思いをしてほしくないんです。
現場で関わる助産師の葛藤
このように、実際に人工妊娠中絶の現場に立ち会う助産師は、複雑な思いを抱きながら専門的なケアを行っています。しかし助産師自身の思いや感情・価値観を、対象の女性へ押し付けることは絶対に避けなければいけないため、自分の気持ちを押し殺したり、整理しながらケアを行うことも数多くあります。それはケアを受ける側からすると最善のケアですが、ケアをする側にとっては葛藤など複雑な思いを増長させることに繋がります。そのため、ケアを行った助産師自身も自分自身のケアを行う必要があると思います。助産師であっても、専門職である前に一人の女性であり人間なので、感情を吐き出すなどメンタルケアを忘れずに行ってほしいです。
まとめ
実際に現場で人工妊娠中絶に関わる助産師は、正直中絶をどう思ってるのかというセンシティブな内容をまとめてきました。
人それぞれ価値観や考え方があるので、賛否両論あると思います。しかし、人工妊娠中絶が女性を救うこともあるということは事実であり、出産後の新生児遺棄や虐待など悲しい事件が増えてしまうことだけは避けたいです。人工妊娠中絶に賛成反対、という一部分だけに焦点を当てるのではなく、女性の現状や決断に至る背景など、総合的な視点で考えていくことが必要だと考えます。
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