新人助産師の時期というのは、一助産師としてその責任の重さを感じながら、慣れない環境で常に緊張が続く毎日です。
大変な1年ではありますが、大きな成長を経る時期でもあります。
今回は、実際にZ世代(1996年~2012年生まれ)の助産師たちに集まっていただき、新人時代の体験談や乗り越え方について詳しくお話を伺いました。
幼少期からデジタルネイティブで、インターネットの大量な情報に触れ、コロナ禍も経験したZ世代。そんなZ世代ならではの悩みや乗り越え方を、生の声をもとにまとめてみました。
◯Z世代の新人助産師が直面する課題とは
1. 多重業務への対応
- 「学生の時は1対1で関わってたけど、仕事になるとそうはいかず…。多重業務に慣れるまでが本当に大変でした」
新人助産師たちが最も困難を感じているのが、多重業務への対応です。
誘導分娩を同時に管理しつつ、産婦さんのケア、記録など、同時進行で複数の業務をこなすことに大きな負担を感じています。
特にZ世代は、正確性と効率性を重視する傾向があり、複数の業務を完璧にこなそうとするあまり、精神的なストレスを抱えやすい傾向にあります。
2.臨機応変
- 「指示が曖昧だったりすると何をやっていいか分からなくなったり、先読みしてやることが苦手で辛かった。」
デジタルネイティブの環境では、決まった手順やマニュアルに従えば、正解がきちんと出てきます。
そのため、マニュアルを忠実に守る姿勢が評価される一方で、臨機応変な対応に苦手意識を持つことが少なくありません。
予測不能なことが起こる出産の現場では、状況に応じた判断力が求められますが、「マニュアルにない対応」に戸惑い、自信を失うこともあります。
3. 職場での人間関係
- 「人間関係が辛かった。」
世代間のコミュニケーションギャップも大きな課題として挙げられます。
Z世代は、情報収集やコミュニケーションの方法が従来の世代とは異なります。
メールやLINEなどが主流で、相手の顔を見て会話をするという経験が少ないです。
そのため、職場の歓送迎会など大きな集まりが苦手だったり、先輩助産師とのコミュニケーションスタイルの違いに戸惑いを感じることも少なくありません。
4. 体力面での課題
- 「想像以上に体力勝負で辛かった。」
24時間体制の勤務形態や、長時間の立ち仕事など、想像以上の体力勝負に直面し、身体的な疲労を訴える声も多く聞かれました。
特に夜勤明けの体調管理や休息の取り方に苦心している様子が伺えます。
5. SNSによる比較と自己否定
- 「SNSで同期の分娩介助件数を見て落ち込んだりしてました。」
現代特有の課題として、SNSを通じた他者との比較があります。
同期の助産師がSNSで発信する充実した仕事ぶりや進歩を自分の状況と比較し、自己否定的になってしまう傾向が見られます。

◯Z世代の先輩助産師からの経験に基づくアドバイス
1. 新人時代にやっておくべきこと
基礎知識・技術の確実な習得
- 「遠慮しないで、もっと質問すれば良かった。分からないことを分からないままにせず、なぜなのかまで理解したほうがいい!」
- 「1年目のうちに遠慮せずもっと沢山聞いて、見て学ぶべきだった。」
2年目になった途端に目も手も離れてしまい、「これどうだっけ?」と思っても、聞きづらくなりがち。
よく行われる処置や基本的な知識・技術は確実に習得しておいた方がいいです。
人間関係の構築
- 「信頼できる先輩との関係作り早めに信頼できる、頼れる先輩を見つける。疑問や不安があったときにすぐに相談できる人がいれば気持ちが楽だった。」
すぐに相談できる人間関係を構築しておくことが、2年目以降も頑張れるポイントになります。
2. 避けるべき失敗
過度な完璧主義
- 「完璧じゃなくても大丈夫!と言い聞かせる。失敗を恐れずに色々やってみた。」
憧れている先輩も新人時代があり、最初から全てできたわけではありません。
自分に厳しすぎたり、周りと比較しすぎるとますます自分を追い込むハメに。
完璧を求め過ぎず、焦らずマイペースに進むことが大事になります。
コミュニケーション不足
- 「自分だけで頑張ろうとせず、周りの人にもっと頼れば良かった。」
助けを求めることを躊躇せず、困難な時はSOSを出しましょう。
先輩も心配して声をかけたり、フォローしてくれますが、自分からもしっかり発信して、コミュニケーションを取っていきましょう。
特に新人の頃はこまめに報告・連絡・相談を徹底しながら、何を伝えればいいか必要な内容を学んで行くのも大事です。

まとめ
新人時代は誰もが不安と戸惑いを感じる時期です。
しかし、この時期を乗り越えることで、専門職としての基礎が築かれていきます。
それまでの間、Z世代特有の強みも活かしながら、頑張りすぎず、でも着実に。
1日1日が充実したものになるといいですね。
プリセプターなど指導者の方にも、Z世代の指導方法の参考になれば嬉しいです。
より質の高い周産期医療の提供するためにも、新人助産師一人一人の努力と、安心して成長できる環境づくりが大事ですね。