【2024年最新】産科DICの新基準を徹底解説|助産師の基礎知識
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- 血液凝固系の異常
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産科DIC(播種性血管内凝固症候群)は、妊娠・分娩中や産後に起こりうる重篤な合併症です。産科DICの症状は急速に進行するため、不可逆的な状態になる前に早期にDIC治療を開始できることが母体や胎児の生命を守る鍵となります。
そのため産科DICが起こっていることを迅速に診断するための基準は重要な指標となります。日本産科婦人科学会は、これまで長年利用してきた「産科DIC診断基準(スコア)」を2022年6月に改訂して、「暫定版産科DIC診断基準」を策定しました。
そして、2024年に「2024年改訂版産科DIC診断基準」を発表しています。この変更により、診断の精度向上と迅速な対応が期待されています。
新しい診断基準の内容や改訂に至った経緯を知り、実際に活用できるようにしていきましょう。
1. 産科DICとは?
DIC(播種性血管内凝固症候群)は、血液凝固系の異常により微小血管に血栓が形成される一方で、過剰な血液凝固因子の消費から出血傾向が生じ、多臓器不全にまで至ることがある疾患です。
「産科DIC」とは特に妊娠・分娩に関連して発症することを言い、特に妊娠中は出産に備えて凝固亢進状態で、DICを発症しやすい状況にあります。
産科DICを発症する原因としては以下のようなものがあります。
・常位胎盤早期剥離
・羊水塞栓症
・子癇発作やHELLP症候群
・出血性ショック
・重症感染性(敗血症など)
産科領域では異常出血などによる線溶系が亢進するDICが多く、羊水塞栓などの基礎疾患を伴う消費性凝固障害となる特徴があります。
2.診断基準改定の背景
DICの診断基準は血液検査のみに基づいていたため、臨床徴候を反映しづらいという課題がありました。そのため、妊産婦の特徴を踏まえた検査値や産科特有の臨床的症状が追加された「産科DIC診断基準(スコア)」が作成されました。
これにより診断の感度と特異度の両立が図られました。
しかし、これまで長らく利用してきた診断基準も判断項目が多く煩雑という課題があったため、この度の改訂に至っています。
3. 新しい診断基準のポイント
2024年に改訂された新基準では、診断項目がⅠ.基礎疾患・徴候、Ⅱ.凝固系検査、Ⅲ.線溶系検査の3項目となりました。
またその3項目からそれぞれ該当するものを1つだけ選択し、産科DICのリスクや有無を診断するようになっています。
例えば基礎疾患・徴候であれば、今までは基礎疾患からその状態や治療状況、出血量によってスコア基準が設けられていました。
しかし、新基準では、治療状況や出血量に関わらずその疾患のみを選ぶと点数がつくようになっています。
新基準では評価項目が簡潔化されており、短時間での診断が可能となったため従来よりも実際の臨床で使いやすくなりました。
またスコア基準をもとに、早期の輸血や抗凝固療法の導入が可能になります。
以下が【2024年改訂版産科DIC診断基準】となります。
【2024年改訂版産科DIC診断基準】
Ⅰ.基礎疾患・徴候 | 点数 | Ⅱ.凝固系検査 | 点数 | Ⅲ.線溶系検査 | 点数 |
---|---|---|---|---|---|
a.常位胎盤早期剥離 | 4 | フィブリノゲン(mg/dL) |
| a. FDP (ug/mL) |
|
・止血困難な分娩後異常出血の産婦に対して、基礎疾患・徴候、凝固系検査、線溶系検査各項目の該当するものを1つだけ選び合計する。
・8点以上となった産褥婦を産科DICと診断する。
・非凝固性分娩後異常出血;分娩後異常出血のうち、出血に凝血を伴わないものを指す。
・膿盆などの容器に集めて凝血塊(血餅)が形成しないことを確認することが望ましい。
・この診断基準は分娩後異常出血の管理に「産科危機的出血への対応指針(最新版)」と併せて利用することを目的に作成されている。
日本産婦人科・新生児血液学会・日本産婦人科学会
文献1)より引用
まとめ
今回、変更された産科DICの新しいスコア基準は、診断の精度向上と迅速な対応を目的としています。産科のDICは急激にその症状が進行するため、診断にはスピード感が求められます。今回のスコア基準は産科特有のリスク因子を反映した内容で、従来よりも臨床現場で使いやすくなっており、現場での活用が期待されています。
助産師として早期発見・早期治療の鍵を握る新しい基準を理解し、適切なケアの提供に役立て、より安全な分娩を目指していきましょう。
引用・参考文献
1)日本産婦人科・新生児血液学会HP 2024改訂版産科DIC診断基準 産科DIC診断基準
http://www.jsognh.jp/dic/
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