助産師という仕事は、分娩介助の緊張感、夜勤のハードワーク、日々の業務に追われる毎日...。やりがいと同時に大きな責任と重圧を伴う職業です。
時には「この仕事、続けていけるかな」と悩むこともあるでしょう。
そんな中、私たちが実施した「助産師になってよかったと感じる瞬間」についてのアンケートには、2万人もの現役助産師から心温まる回答が寄せられました。
今回は、その中から特に印象的なエピソードをご紹介します。これから助産師を目指す方はもちろん、現役の助産師の皆さんにとっても、初心を思い出すきっかけになれば幸いです。
助産師の醍醐味と言えば、なんといっても出産の瞬間に立ち会えることでしょう。
アンケートでも、多くの助産師がこの点を挙げています。
「分娩介助をさせていただいて、元気な赤ちゃんに会えるたびに、素敵な仕事だと感じます」という声や、「出産直後のママの表情は、何度見てもぐっと来ます」といった回答が数多く寄せられました。
特に印象的だったのは、「家族全員で赤ちゃんを迎える瞬間に立ち会える」という喜びです。医療者でありながら、その家族にとって特別な瞬間を共有できる。
これは、助産師ならではの特権かもしれません。
助産師として最もやりがいを感じる瞬間の一つが、ママからの感謝の言葉です。
アンケートからは、さまざまな形での感謝エピソードが集まりました。
・「あなたが担当で本当によかった。次の出産もお願いしたい」と言われた時
・担当した母親が、自分の名前にちなんで赤ちゃんの名前を付けてくれた時
・心のこもった手紙をもらった時
中でも印象的だったのは、実習時代に関わった妊婦さんのエピソードです。
その方が2人目の出産で再び病院を訪れた際、「学生さんに教わった呼吸法を思い出して、頑張ります」と話していたそうです。一期一会の出会いだと思っていても、実は母親の心に深く残っているのだと実感させられるエピソードですね。
助産師という職業ならではの経験として、多くの回答者が「身近な人の出産に関われたこと」を挙げています。
・実の姉妹の出産を担当
・自分の娘の出産をサポート
・親友の陣痛から分娩まで全過程に寄り添えた
・緊急帝王切開となった同期の出産に、仲間全員で関われた
特に印象的だったのは、「助産師としての初めての分娩介助が妹の出産で、姪を取り上げることができた」というエピソード。生まれた瞬間から赤ちゃんを知る叔母として、また助産師としての大切な記念となったことでしょう。
自身も出産を経験した助産師からは、「体験者だからこそ伝えられることがある」という声も多く寄せられました。
・陣痛の痛みを実感することで、より適切なケアが提供できるようになった
・分娩停止で帝王切開になった経験から、同じ状況の妊婦さんの気持ちに寄り添えるようになった
・産後ケアの重要性を身をもって理解できた
このように、自身の出産経験は専門知識だけでは得られない、
深い共感と理解をもたらしてくれます。もちろん、出産経験の有無が助産師としての能力を左右するわけではありませんが、自らの体験を通して得た気づきは、より温かなケアの提供につながっているようです。
嬉しい発見だったのは、「自分を見て助産師を志した後輩と再会できた」というエピソードです。ある助産師は、「実習指導で関わった学生が、数年後に同じ病院の同僚として働き始めた時は、感慨深かった」と語ります。
「かつての実習生と、今度は同僚として分娩に立ち会えました」といった声からは、先輩助産師としての誇りと感動が伝わってきます。
このように、次世代の助産師育成に関われることは、この職業の大きなやりがいの一つと言えるでしょう。私たちの仕事や姿勢が、誰かの人生に影響を与え、助産師という素晴らしい職業の継承につながっていく。そんな喜びと責任を感じさせてくれるエピソードです。
アンケートには、「まだ助産師になってよかったと実感できていない」という正直な声も寄せられました。これは決して特別なことではありません。
新人の方はもちろん、ベテランの助産師でも、時には立ち止まって考えることがあるでしょう。
そんな時は、自分が助産師を目指した理由、きっかけを思い出してみてはいかがでしょうか。先輩助産師に相談したり、同期と思いを共有したりすることも大切です。
助産師としての自分らしい働き方や、やりがいは、必ず見つかるはずです。
助産師という仕事は、時に大変で心が折れそうになることもあります。
しかし、新しい命の誕生に立ち会い、家族の幸せな瞬間を共有できること、それは、かけがえのない特権であり、誇りでもあります。
このアンケートに寄せられた数々のエピソードが、そのことを改めて教えてくれています。