
【助産師の基礎知識】産科でよく使う鎮痛剤の基礎知識|妊娠・授乳への影響
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鎮痛剤は避妊時から頭痛や腹痛などに対して市販薬や処方された薬剤を使用している患者さんは多くいます。
しかし妊娠期や授乳期では使用してはいけない鎮痛剤もあり、患者さんからは外来での保健指導や産後入院中に、「痛み止めは何を使ったらいいですか?」とよく質問されます。そこで私達は専門職として使用方法から禁忌、注意点などの正しい知識を持って説明ができる必要があります。
◯アセトアミノフェン
(カロナール,コカール,アンヒバ,アセリオ)
使用方法
カロナール、コカールは1回300〜1000mgを経口投与します。
アセリオ静注液は体重1kgあたり1回15mgを上限として15分かけて静脈内投与します。
投与間隔は4〜6時間以上とし、1日最大4000mgを限度とします。
禁忌
重篤な肝障害がある場合は禁忌になります。
注意点
妊娠初期から産後まで比較的安全に使用することができます。
しかし、妊娠後期での使用により胎児に動脈管収縮を起こす可能性があるといわれているため、1日の使用量は多くなりすぎないようにします。1日総量が1500mgを超えて長期間投与する場合などは、定期的に肝機能を確認するなどして慎重に投与します。また、なるべく空腹時は避けることが望ましいとされています。
さらに近年、妊娠中のアセトアミノフェンの使用による、子供の注意欠陥/多動性障害(ADHD)および自閉症スペクトラム障害(ASD)のリスクが増加すると示唆されています。
アメリカでの大規模検証試験の結果、在胎中のアセトアミノフェン曝露と児のADHD・ASD発症リスクには強い関連が見られると発表されました。
◯イブプロフェン
(イブプロフェン,ブルフェン)
使用方法
1日量600mgを3回に分けて経口投与します。
頓用の場合は、1回量200mg、原則として1日2回までとし、1日最大600mgを限度とします。
禁忌
妊娠後期、消化性潰瘍、重篤な血液異常・肝・腎障害、心不全・高血圧症、アスピリン喘息がある場合は禁忌になります。
注意点
最も多い副作用は胃腸症状で、重症化することは稀ですが、胃腸症状が遷延、増悪する場合には胃潰瘍などにも注意する必要があります。可能な限り食後に服用するように指導する必要があります。
また喘息の既往がある人への投与は、喘息発作を誘発する可能性があるため、過去の鎮痛剤の内服の有無や種類など、詳細に問診をとることが必要です。

◯ロキソプロフェンナトリウム水和物
(ロキソニン,ロキソプロフェン,ロキソプロフェンNa,サンロキソ,ロキフェン,ロキプロナール)
使用方法
1回1錠(60mg)を1日3回経口投与します。
頓用の場合は、1回1〜2錠(60〜120mg)を経口投与、1日最大3錠が限度となります。
禁忌
消化性潰瘍、重篤な血液異常・肝・腎障害・心不全・アスピリン喘息、妊娠後期の患者さんには禁忌になります
注意点
NSAIDsは妊娠後期には投与することで胎児動脈管を収縮させ、肺高血圧症を引き起こす可能性があり、ロキソプロフェンナトリウム水和物は使用しないことが望ましいとされています。
乳汁中には移行しないことが示されており、授乳期での使用は問題ないとされています。
※NSAIDsとは、非ステロイド性抗炎症薬のことで、鎮痛・解熱・抗炎症作用を併せもつ薬剤の総称をいいます。代表的なものとしてロキソプロフェンナトリウム水和物、ジクロフェナクナトリウムなどがあります。
◯ジクロフェナクナトリウム
(ボルタレン,ボンフェナック,ジクロフェナクNa,ジクロフェナックなど)
使用方法
1回3〜4錠(75〜100mg)を3回に分けて経口投与します。
頓用の場合は1回1〜2錠(25〜50mg)を経口投与します。1日最大100㎎が上限となります。
禁忌
ジクロフェナクナトリウムは添付文書より、妊婦への投与は禁忌になっています。
また、消化性潰瘍、重篤な血液異常・肝・腎障害・心機能不全、アスピリン喘息の患者さんにも禁忌になります。
注意点
ロキソプロフェンと同じく、NSAIDsは妊娠後期には投与することで胎児動脈管を収縮させ、肺高血圧症を引き起こす可能性があります。
産後はロキソプロフェンの同じく乳汁中には移行しないことが示されており、授乳期での使用は問題ないとされています。

☆ワンポイントアドバイス
市販で鎮痛剤は多数販売されています。
その中で妊娠期から使用できる薬剤の選び方には3つのポイントがあります。
①アセトアミノフェンが主成分のもの
上記にあげた通り、アセトアミノフェンは妊婦や胎児への影響が比較的少ないとされているため、第一選択薬として推奨します。
②消炎鎮痛薬を含まないもの
ロキソプロフェンなど消炎鎮痛薬のほとんどは妊娠期には使用できません。
③カフェインを含まないもの
カフェインはコーヒーや緑茶などにも含まれる覚醒成分の1種です。複数の有効成分を含む風邪薬にもしばしば含まれており、気づかないうちに摂取していることがあります。妊娠期に摂取すると流産の原因になることもあるため、カフェイン成分の含む市販薬はなるべく避けた方が無難といえます。
市販薬を選ぶポイントがわかっていれば使用しても問題ないと思われますが、一番は産婦人科医や妊婦専門の薬剤師など専門的な知識を持った人に相談することが重要です。
鎮痛剤一つをとっても多数ある中で、患者さんの使用する時期から既往歴などを把握し、患者さんに合った鎮痛剤を選択・指導できるようになることは必要です。
薬剤は先発品から最近ではジェネリック薬品も多く販売されているため、常に新しい情報を吸収し、患者さんに提供できるよう学び続けていくことが重要です。
使用頻度の高い薬剤だからこそ、改めて正しい知識をもって、患者さんと関われるようにしていきましょう。

参考文献
1.周産期の薬の大事典 妊娠期・分娩期・産褥期・新生児の薬剤&ワクチン133大解説
2.今日の治療薬 解説と便覧
3.子宮内アセトアミノフェン曝露の臍帯血漿バイオマーカーと小児期の注意欠陥/多動性障害および自閉スペクトラム障害のリスクとの関連https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/2753512

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