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2024
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産褥期(育児)

【助産師の新常識】帝王切開の傷痕ケア|いつまでテープを使うべき?

  • 帝王切開の傷
  • 傷ケアテープ
  • 傷のケアは心のケア
SUMMARY
この記事でわかること
帝王切開の傷あとケアについて、退院指導で説明できていますか。産院ごとの決まりで1ヶ月健診まではテープを使用するように指導している施設が多いと思いますが、その期間は表面上の治癒だけに関する傷ケアであり、美容的な観点からの傷ケアとしては情報が不足しています。帝王切開の傷あとを肌の色と同じくらいまで治すためには、もっと長期的なケアが必要となります。この記事では、帝王切開の傷あとケアに必要なケアの方法と期間についてまとめていきます。

今回は、株式会社THE COTTAGEの杉山涼子さんと、帝王切開専門助産師として活動されている助産師の谷口和代さんと一緒に帝王切開の傷痕ケアについて考えていきます。杉山さんは、帝王切開で出産したママの声を詰め込んだ、術後の傷あとケアテープを自社で作って販売されています。販売開始から1年経った今、リピーターさんも増えてきたそうで、皮膚科医や助産師から支持を得ている注目の商品です。

傷あとにトラブルが生じる原因

じょさんしnavi柏村

そもそも帝王切開の傷をケアすることで、どのようなメリットがあるんですか?

杉山

帝王切開後の傷あとを、キレイでトラブルの少ない状態にするには「セルフケア」が大切です。帝王切開で出産した後の傷は、盛り上がってきたり、痛み・引きつれなどの症状が出やすくなります。

じょさんしnavi柏村

帝王切開の傷あとにトラブルが出やすい原因は何なのでしょうか。

杉山

体質などもありますが、一番は物理的な刺激が多いです。傷あとが伸び縮みするような体の動き、衣類の摩擦や擦れ、掻いてしまうことによる刺激、紫外線などによる刺激などたくさんの要因があります。特に帝王切開の傷は下腹部なので、ショーツやズボンなどのゴムに丁度あたってしまう位置で衣類の摩擦が大きかったり、身体のどんな動作でも腹部が動いてしまうので傷自体の伸縮による影響があります。

じょさんしnavi柏村

正直体質を変えるのはなかなか難しいですが、物理的刺激なら努力次第で予防することができますよね。

杉山

そうなんです。そのために傷あとをテープで保護してあげることが大事なんです。先ほどの物理的刺激を全て防いでくれるので、トラブルを予防することができます。

傷が治るために必要な期間とケア方法

 帝王切開の傷の表面を治すために1ヶ月間程度、テープを使用するよう説明している産院は多いと思います。しかしこれは、医学的にトラブルを起こさないようにするためだけの期間であり、真皮や脂肪、筋肉の層まで完全に修復するためには少なくとも3ヶ月間〜半年程度のセルフケア期間が必要です。

 必要なセルフケア方法は、①傷あとをテープで保護すること②保湿をすることです。

 傷が治る際、新しい細胞が傷を埋めていく増殖期という時期が1ヶ月間あり、3ヶ月頃からだんだんと勢いは落ち着いてきます。ここまでの時期に傷の自然治癒を妨げないよう、できるだけ外部の刺激から守る必要があります。そのためにテープの使用がとても有効となります。テープ使用中に赤みや痒みが出てきた場合には、テープの種類を変えたり、テープを使用しない時間をつくることでトラブルの悪化を防ぐことができます。

 また、保湿をすることも重要です。保湿をすることで、傷や周囲の皮膚の新陳代謝を促進し、炎症を抑える効果が期待できます。傷あとが乾燥してしまうと、傷や周囲の皮膚に痒みを生じやすくなり、我慢できず掻いてしまうことで傷への刺激となってしまいます。


傷あとケアテープの種類と特徴

帝王切開の傷あとケアには、主に3種類のテープがあります。

①絆創膏タイプ

 テープは何日間かごとの張り替えでいいので手間は少ない。肌色の商品が多く、テープを貼ったままでも目立ちにくい。数日間貼り続けるため比較的粘着力は強めで、剥がす時の刺激などにより、痒みが出たり発赤を起こしやすい。毎日傷の観察ができない。

②フィルムタイプ

 テープは何日間かごとの張り替えでいいので手間は少ない。透明のため、テープを使用したままでも傷の観察ができる。

③シリコーンタイプ

 毎日張り替えが必要。比較的粘着力が弱めのため、痒みや発赤などのトラブルを起こしにくい。剥がす時の負荷も少ない。ほかのテープよりも厚みや弾力があり、クッション性が良い。

 テープの種類は様々あり、メーカーによって特徴も異なります。張り替えの頻度などケアの手間もありますが、患者さんそれぞれの皮膚に合うかどうかが重要になってきます。助産師は帝王切開の傷あとテープに種類があることを理解し、患者さんの選択肢を増やすお手伝いをしていきたいです。

助産師が知っておきたい退院指導の内容

じょさんしnavi柏村

助産師として、帝王切開のお母さん達にどのような傷あとケアを説明していくべきだと思いますか。

谷口

私自身も帝王切開を受けたのですが、当時はケアテープがあることを知らなかったんです。私と同じ経験をしてしまうお母さんを減らすために、①傷あとのケアが必要だということ②お母さん自身が選べるアイテムの1つとして傷のケアテープが販売されていること、を伝えて欲しいです。

 お母さん達にとって助産師が傷のケアについて知ってくれているというのは大きな喜びに繋がります。傷のケアは心のケアと言われているので、傷のケアを行い、お傷に対して優しい気持ちになって頂けたらと思います。

じょさんしnavi柏村

年々帝王切開率は増加していて、病院における傷のケアはさらに求められると感じています。

帝王切開の傷あとケアに対して、今後助産師はどのような位置付けを担っていく必要があると感じますか?

谷口

緊急で帝王切開になるママがすごく多いので、事前にケア方法など調べているママは少ないと思います。できれば助産師さんから「傷あとケアの重要性」「テープで簡単にセルフケアができる」ことを説明して、不安を取り除いてあげてほしいなと思います。

じょさんしnavi柏村

明日からできる傷あとケアとして、助産師からママに伝えてほしいことなどはありますか?

杉山

ケアテープはいろいろな種類があり、それぞれにメリットデメリットがあります。感じ方は人それぞれ違いますし、ケアをする期間は長期戦で、お傷の状態も日々変化するので「最初はこのテープにしてみよう」「この時期からはこっちのテープにしようかな」そんな風に、ママのその時々に合ったアイテムでケアを無理なく快適に続けることが大切だと伝えてもらえたらと思います。


帝王切開の傷あとにセルフケアが重要であることを理解できたでしょうか。帝王切開の傷あとは、赤ちゃんを命がけで産んだ勲章とはいえ、自分の身体にできた傷はできるだけきれいに治したいものです。帝王切開をしたお母さんたちが、傷のセルフケアをしないことでどうなるのかまで予測できないでしょうし、まして育児の最中に自分の傷について情報収集する時間もありません。傷あとケアは少し意識をするだけで大きな労力がかかるものではないので、助産師が正しい情報を提供することで、お母さんが自分の身体や傷あとをねぎらい、いたわることができるようお手伝いしていきたいですね。

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