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2024
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産褥期(育児)

帝王切開専用の退院指導が不可欠なワケ|5人に1人は帝王切開で出産する時代

  • 退院指導
  • 家族のサポート
  • 産後の育児
SUMMARY
この記事でわかること
帝王切開により出産した人の数は2020年の統計によると約5人に1人と推定されています。出生数は減少しているにも関わらず、帝王切開による出産は過去30年間で約2倍に増加しているという現状です。このような分娩数の背景を踏まえ、帝王切開専用の退院指導を実施している産科施設は正直なところ多くないと思います。帝王切開専用の退院指導では何を説明するべきなのか、深掘りしていきます。
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この記事の目次

     今回は、帝王切開カウンセラーの細田恭子さんと、帝王切開専門助産師として活動されている助産師の谷口和代さんと一緒に、緊急帝王切開における助産師の役割について考えていきたいと思います。

     細田さんはご自身が2回の流産と3回の帝王切開を経験され、帝王切開やいのちのお話についての活動をされています。谷口さんは帝王切開を2回経験され、現在も現役助産師として帝王切開専門助産師として助産院を開業されています。

    じょさんしnavi柏村

    帝王切開のお母さんに退院指導で伝えるべきことがあれば教えてください。

    谷口

    退院指導のパンフレットって経膣分娩寄りのことが多いですよね。だからまず、帝王切開のときはどんな時に受診が必要なのかを説明してほしいです。

     それから、傷を気にした生活の仕方についてです。自宅に帰ってから、家事や育児全部を一人ではできないです。ご主人さんが育休を取っているご家庭も今多いんですが、実際に産後ケアで訪問したりすると、ご主人さんが育児をしてお母さんが家事をしているご家族もいらっしゃいます。実際に想像してほしいのですが、食器を洗う時はシンクにお腹があたります。ゴミを拾って捨てることにもしゃがんで立つ動作で刺激になりますし、洗濯物を干すことも腕を上にあげて干したり、お風呂掃除もしゃがむような姿勢が必ず入ります。

     ひと昔前は床上げと言って1ヶ月はしっかり休みましょうねって退院指導で言っていましたが、今はご主人さんの育休取得によって里帰りするお母さんも減っているので、お母さんが休むというところが薄れてきているんじゃないかなと思います。だから、ご家族や行政など周囲へサポートをお願いすることが大切だよ、まだ自分は今そんなに動いていい状態じゃないんだよ、と傷のことを考えながら説明していただくとお母さんは行動しやすいと思います。

    細田

    入院中にできることはやっぱり限られてくると思うんです。

    医療者じゃない立場の意見としては、退院してから困ったら次はどこに行ってみてね、と次にSOSできる場所を伝えることも大事かなと思います。どうしてもひとりぼっちで傷の痛みと戦って、それなのにご主人にわかってもらえなかったりすると、あとあとの育児に影響してくると思うんです。だからここにこういう人がいるよ、とぜひ助産師さんのつながりの中で共有していただけたら心強いかなと思います。

    じょさんしnavi柏村

    帝王切開のお母さんへ退院指導で伝えたいことがたくさん見つかりました。

    谷口

    私は帝王切開専用の冊子が別で必要だと思うんです。帝王切開のお母さんには追加でこれを渡す、というものがあってもいいですよね。

     退院指導のパンフレットはほとんどの施設にあると思いますが、帝王切開専用ページがある施設は少ないのではないでしょうか。谷口さんが言うように、帝王切開後には傷のケアや治癒過程について、生活での注意点、受診の目安など経膣分娩との違いがあります。そもそも退院指導をする産後早期の時期には、どのお母さんも寝不足や疲労が重なっていますし、集中力や記憶力は普段より低下している場合が多いですよね。口頭の説明だけではなく、退院後にもお母さん自身が見返せるよう、媒体を活用して説明する方が適切な手段でしょう。

     また、家族へも説明できる媒体になることがメリットだと思います。お母さん自身が説明を受けた内容を家族に話したとしても、なかなか理解してもらえないという声を聞きませんか?帝王切開後の体を大切にしてほしい、傷の治癒に時間がかかること、ホルモンバランスなど変化は男性や両親世代の年齢層の方にはなかなか簡単に理解してもらえない内容です。出産した施設から渡されたパンフレットであれば、説得力がありますしご家族の理解にもつながる可能性が高いです。

    じょさんしnavi柏村

    最後に帝王切開へ関わる助産師さんへ、お二人から伝えたいメッセージをお願いします。

    谷口

    日々忙しい業務の中で責任感をもってお仕事されている助産師さんがたくさんいらっしゃると思います。しかしお母さんの声を聞く私からみると、もう少し寄り添ってほしかったなという声を多く聞きます。妊娠出産に関わることでその後の人生に大きく左右することもありますし、その時に大切にしてもらったと実感することはすごく大事だと思います。

     私たち助産師は、学生の頃からあまり帝王切開のことについて学ばずにきてしまっているし、術後看護は学んでいるけれど帝王切開の看護は学んでいませんよね。就職してから見よう見まねで習得して実際にケアをしているってことがとても多いんじゃないかなと思います。帝王切開の確率も上がってきているので、きちんとした知識として習得し、今よりもレベルアップした助産師さんになってほしいと思います。お母さんの気持ちということを考えながら看護の原点に立ち返って、寄り添うという目で見て触れるということを大切にしていただきたいなと思います。

    細田

    私も一人緊急帝王切開で出産していて、その時に付き添ってくださっていた助産師さんのことをすごく覚えています。「あの人がいたから私が今ここにいるんだな」って言ってもらえるような、育児の始まりの時に寄り添ってくれた人「あの人」になっていただきたいなと思います。

    じょさんしnavi柏村

    本当ですね。やっぱり経験された方の話を聞くと、自分自身まだまだと思うこともありますし、お母さんの立場になってかんがえていかなきゃだめだなという風に改めて思いました。改めて帝王切開について考えてくれる助産師さんが増えてくれると嬉しいなと思います。

    帝王切開専用の退院指導が必要な理由を感じていただけたでしょうか。まずは助産師自身が帝王切開を経験したお母さんの退院後の生活を理解する必要があります。そうすれば必然的に経膣分娩の退院指導と内容が同じという現状はなくなるのではないでしょうか。全ての帝王切開を経験したお母さんとその家族が、退院後に身体を大切に生活する必要性を理解し、無理のない育児のスタートを切れるよう助産師はサポートしていきたいです。

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