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産褥期(育児)
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25
2025

助産師のための“今どき離乳食”入門|補完食としての考え方と便利グッズの選び方

  • 離乳食
  • BLW
  • アレルギー
SUMMARY
この記事でわかること
「10倍粥からスタート」「スプーンに慣らす練習」——。かつての離乳食は“食べる練習”の側面が強く、時間をかけて少しずつ進めていくというのが一般的でした。しかし最近では、離乳食は「補完食」と捉えられるようになり、赤ちゃんの栄養状態を守る“重要な食事”としての意識が高まっています。それに伴い離乳食の進め方は大きく変わってきています。助産師として知っておきたい最新の離乳食事情を、厚生労働省や日本小児科学会の見解をもとにわかりやすく解説します。

1. 離乳食から“補完食”へ:考え方の大きな転換

補完食(Complementary Feeding)とは?

厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」では、離乳食は単に「食べる練習」ではなく、母乳やミルクでは不足する栄養を補う食事=補完食と定義されています。特に、生後6か月以降の乳児は鉄、亜鉛、タンパク質、ビタミンA・Dといった栄養素が不足しやすくなると指摘されています。

なぜ鉄が大事?

赤ちゃんは胎内で貯めた鉄を使いながら成長しますが、生後6か月ごろから急速に鉄が不足してくることがわかっています。厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド(2019)」には「生後6か月以降は、母乳だけでは鉄が不足しやすく、適切な補完食の開始が必要である」と記載されています。鉄不足は運動発達や認知機能、情緒面にも影響を与える可能性があり、母乳育児を継続している赤ちゃんほどリスクが高いと言われています。

2. 離乳食開始の目安と実践ポイント

開始する時期は「生後5〜6か月ごろ」が基本で、赤ちゃんに以下のようなサインが見られたら離乳食スタートの目安とされています。

  • 首がすわっている
  • 支えて座れる
  • 大人が食べている様子に興味を示す
  • スプーンなどを口に入れても舌で押し出さない

早すぎる開始(生後4か月未満)は赤ちゃんの消化器への負担やアレルギーリスクを高めるため推奨されていません。WHO・UNICEFの「補完食に関するガイドライン(2001)」には「補完食は生後6か月ごろから開始するのが望ましい」と記載されています。

3. 10倍粥からつぶしがゆへ?最近のスタート事情

以前は「10倍粥(米1:水10)」からのスタートが定番でしたが、現在はつぶしがゆからの開始も選択肢として注目されています。10倍粥は水分が多すぎて必要な栄養素やカロリーを補うことが難しいためです。

つぶしがゆにすると得られるメリット

  • エネルギー、鉄分がより豊富(10倍粥はほとんど水分)
  • 水分が減り、米の割合が高くなるため少量しか食べられない時期でも栄養を多く摂れる(同じ量を食べるならつぶしがゆの方が栄養豊富でカロリーも高い)
  • なめらかに裏ごしすれば、つぶしがゆでも赤ちゃんが無理なく嚥下できる

「お粥=必ず10倍」という固定観念から離れ、赤ちゃんの発達や栄養状態に合わせて粥の形態を選択する必要があります。

4. 最近よく聞く「BLW」とは?

BLW(Baby-Led Weaning)=赤ちゃん主導の離乳のことを指します。イギリス発祥の食事スタイルで、最近は日本でも関心が高まっています。

BLWの特徴

  • 手づかみで食べるのが基本
  • ペーストやスプーンより「自分で食べる」ことを尊重
  • 食事の形状はスティック状や握りやすい大きさ
  • 自律性・意欲・発達を促す効果が期待されている

日本の離乳食は「大人が食べさせる」スタイルが主流でした。BLWでは赤ちゃん自身が自分で選択して自分で食べるスタイルであるため大人とともに食卓を囲むこともできます。その反面、10倍粥から徐々に形態を変化させていく従来の日本の離乳食と比較して最初から固型を食べるBLWは窒息のリスクが高いとされています。万が一に備えて窒息の対応方法を学んでおくなど知識と配慮が必要です。手づかみ食べは食への意欲や口腔機能の発達に繋がるとされています。現時点で、BLWは日本のガイドラインに明確に位置づけられてはいませんが、「赤ちゃんが自ら口に運びやすい形で提供する」ことは発達支援の観点からも重要です。

5. 指導ポイントQ&A

助産師は離乳食に関する相談を受ける機会が少なからずあります。保護者が混乱しやすいポイントと、指導例を紹介します。

保護者からのQ

最新の考え方

指導例A

離乳食はいつから始める?

生後5〜6か月ごろから

発達のサインを見て

発達のサイン

・首がすわっている
・支えて座れる
・大人が食べている様子に興味を示す
・スプーンなどを口に入れても舌で押し出さない

何から始めればいいの?

栄養重視なら5倍粥+たんぱく源(豆腐など)

お粥だけじゃなく、鉄やたんぱく質も早めに取り入れてみましょう

手づかみ食べさせてもいいの?

安全に配慮すれば◎。自律性を育てる

最初から手づかみに挑戦しても良いです。

窒息の危険はあるので食べやすい姿勢にしてあげること、見守りが必要です

母乳だけで足りないの?

鉄・亜鉛などが不足しがち

6か月以降は母乳だけでは足りない栄養素も出てくるので、不足しやすい栄養素を補うために離乳食が必要です。

6. アレルゲンや調味料はどうする?

アレルギーのリスク管理

厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド(2019)」によるとアレルギー予防のために離乳を遅らせることは推奨されないとされています。

  • 卵、乳、小麦などの主要アレルゲンは、生後6か月以降で体調が良い日に、少量ずつ取り入れてOK
  • 卵は「加熱した卵黄→全卵」と段階を踏む
  • 完全除去は推奨されていない(逆にアレルギーの発症リスクを高める)

 調味料はいつから?

  • 離乳初期は基本的に無味(素材の味を生かす)
  • 離乳後期〜完了期にごく薄味(塩分0.5g未満/日)からOK
  • 家族と同じ食事を取り分ける際も、大人の味つけ前に取り分けるのが基本

7.イス選びの重要性

「安定した姿勢」で食べることは、赤ちゃんの口腔発達や安全な嚥下の基本です。ぐらぐらした体勢では、舌や唇の動きも不安定になり、誤嚥・拒否・食べムラなどにつながりやすくなります。これらの悩みはイスや座る際の姿勢を見直すことで解決できる場合もあります。理想の座位姿勢は「90°・90°・90°」です。股関節・膝関節・足首が90°になるイスを選ぶことで安定した座位が保て、手や口の動きがスムーズになり手づかみ食べがしやすくなります。また正しい姿勢は噛みやすく、飲み込みやすいため誤嚥のリスクを下げることもできます。

イス選びのポイント

ポイント

理由

足がしっかり床または足台につく

足がぶらぶらすると体幹が安定しない

背もたれがある

腰が据わっていない時期は特に必要

座面の高さ調整ができる

成長に合わせて正しい姿勢を維持できる

テーブルが外せる・引き寄せ可能

食事の準備や介助がしやすい

実際の選択肢例

  • ハイチェア(ストッケ、YAMATOYA、ビヨンドジュニアなど)
    →足置きの高さ調整がしやすく、正しい姿勢が保てる
  • ローチェア+台座やクッション併用
    →床座の生活が中心の家庭に合う(ただし足がつく工夫が必要になる)

NG例

  • バンボや豆イスなど足がつかないもの
    →短時間なら可だが、長時間の離乳食には不向き
  • 親の膝の上
    →姿勢が不安定(ただし腰座り前で適切なイスがなければ親が支えて座らせても良い)

8.スプーンの選び方

赤ちゃんの「食べたい!」「自分でやってみたい!」という意欲を引き出すには、口のサイズや動きに合ったスプーンを使うことが大切です。

 離乳初期(5〜6か月ごろ)

【素材】柔らかいシリコン素材が安心
【形状】先が細くて平ら、口に入りやすい
【柄】親が握りやすい長めの柄(赤ちゃんはまだ持たない)
【例】リッチェル、ピジョン、オクソートットなどの「離乳初期用スプーン」

離乳中期〜後期(7〜11か月ごろ)

【素材】柔らかすぎず、少しコシがあるもの
【サイズ】赤ちゃんの口に合う大きさで、すくいやすさも重視
【持ち手】赤ちゃんが握りやすい短め・太めの柄もOK(自分で持たせる練習に)
【例】エジソンのお箸シリーズ(スプーン付き)、オクソートットの自分で食べる練習セット など

保護者の疑問

アドバイス例

膝の上であげてもいいですか?

姿勢が安定しないので、できれば専用のイスがおすすめです。足がしっかりつくイスだと噛みやすさも向上します。腰すわりが完了していない時期ならママやパパの膝の上で支えてあげて食べるもの良いです。

バンボで食べさせています

足が浮いてぶらぶらしていると噛みにくく、飲み込みもうまくいかないことがあるので離乳食にはあまり向かないかもしれません。正しい姿勢で噛むことができると口腔機能の発達にも良いので足がしっかりつくイスに変更してみると良いと思います。

どんなスプーンを選べばいい?

初期は小さくて平たいもの、中期からは赤ちゃんが自分で持てるスプーンも試してみてくださいね。

9.離乳食の目安量

時期

回数

主食

野菜・果物

たんぱく質(豆腐・魚など)

初期(5〜6か月)

1回/日

10倍粥:小さじ1〜5→大さじ2(30g)

小さじ1〜2(5〜10g)

小さじ1(豆腐など)

中期(7〜8か月)

2回/日

7倍粥:50〜80g

20〜30g

豆腐30〜40g、魚5〜15g

後期(9〜11か月)

3回/日

軟飯90g〜

30〜40g

豆腐40〜50g、魚15〜20g、肉15g

完了期(12〜18か月)

3回/日+おやつ2回

ごはん90〜120g

40〜50g

肉・魚30g程度

10.離乳食でよくある悩みと対処

◯目安量食べられないor目安量では足りない

  • 目安量を1回で食べられない場合は無理に食べさせなくてもOK
  • 1回の目安裏を半分にして2回食にして食べさせてみるなど少しずつ食べられる量を増やしていく
  • 逆に目安量では足りない場合は形態を変更して噛みごたえがあると満足感がupする
  • 赤ちゃんの体格などでも食べられる量には差が出てくるため目安量はあくまで「目安」体重が順調に増えているか?を確認しながら進めていく

◯丸飲みしてしまう子への対処

赤ちゃんは「噛む」「舌でつぶす」という動きが発達途中です。丸飲みはよくあることで、以下の対応が有効です。

食事の形態の見直し

  • やわらかすぎると噛まずに飲み込んでしまうため、少し“モグモグ感”のある硬さに調整する
  • 舌で押しつぶせる程度の柔らかさ(豆腐くらい)が中期の目安

食べ方を見せる

  • おうちの方が「もぐもぐ〜」と大げさに噛む真似をして見せる
  • 一緒に鏡を見て食べるのも◎

自分で食べられる工夫

  • 手づかみできる食材(スティック状のやわらかい野菜やおにぎりなど)を用意
  • 自分で食べることで、咀嚼の意欲が出やすくなる

◯食べるのをすぐやめてしまう、飽きやすい子への対処

食べる環境の工夫

  • 食事中はおもちゃを片付けて視界に入らないようにする
  • テレビは消して食べることに集中できる環境にする
  • テーブルの上をすっきりさせて、食事だけに意識が向くようにする

食事時間を短く設定

  • なんとか食べさせようと長時間食事介助するのではなく、15〜20分経ったら食事を終わらせるようにする
  • 食べる時間を理解してもらうために時間内に食べ切らなくても食事を下げる
  • 「食べなくなったら終わり」にしてメリハリをつけると短時間で集中して食べられるようになることもある

盛り付けを工夫してみる

  • いろどりのある食材や、顔の形に盛りつけるなど、遊び心を少し加えるのも効果的

◯好き嫌いが多い子への対処

無理に食べさせない

  • 無理に口に入れようとすると、「嫌な記憶」として残ってしまう
  • 「見慣れる」ことからスタートし、お皿にちょっとだけ盛って出してみる
  • 切り方や味付けの工夫
  • たとえばにんじんなら、スティック状・みじん切り・つぶし・甘煮など形や味を変えて提供してみる。
  • 一度ダメでも数日〜数週間あけて出すと、急に食べることもある
  • 大人と同じ食材を食べさせてみる
  • 大人が「おいしいね!」と食べているのを見ると、興味を持ちやすい
  • 味付け前に少し取り分けて、大人と同じメニューを食卓に並べる

離乳食は“練習”ではなく、“栄養を補う”補完食としての考え方が少しずつ浸透してきています。母乳・ミルクだけでは足りない栄養(鉄・亜鉛など)を意識してスタートは5倍粥+たんぱく源が主流になりつつあります。月齢だけでなく、赤ちゃんの発達に合わせてBLWなど赤ちゃん主導の食べ方を選択することも「間違い」ではありません。アレルギーを恐れ離乳食がなかなか進まない、食べたがらない、丸飲みしてしまうなど離乳食には悩みがつきものです。保護者は「これで良いのか?」と悩んだり、不安になったりしながら赤ちゃんの離乳食に取り組んでいます。「そのうち食べるようになるよ」ではなく、「今、食べないことに悩んでいる」保護者へ科学的根拠に基づいて支援していくことが必要です。

引用参考文献:

厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019)」

WHO・UNICEF「補完食に関するガイドライン(2001)」

日本小児科学会「乳幼児の食事に関するQ&A」


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